ジョーイ・バッドアスなどからの批判も? 「Blackout Tuesday」ストライキから考える問題点と課題
2020年6月2日火曜日、「Black Lives Matter」運動が渦巻くアメリカで、音楽産業が黒に染まった。大手レーベルや有名メディアなど、多くの音楽関連企業がSNSアイコンをブラックに変えて「Blackout Tuesday」ストライキに参加したのだ。定額制音楽配信サービスのApple Musicに至っては、ディスカバリー機能にあたる「For You」ページを文字どおりブラックアウトさせ「Black Lives Matter」運動に賛同するステートメントを掲載。当時ここで聴けるラジオは、黒人アーティストによる楽曲を流す「Listen Together」のみだった。ページデザインを黒色基調としたSpotifyにしても、一部ポッドキャストやプレイリストに8分46秒の無音トラックを挿入。これは、2020年プロテストの大きなきっかけとなった黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官に暴力を振るわれ死に至らしめられた時間と同じ秒数である。
「#TheShowMustBePaused(ショーを中断しなければならない)」運動に根づく「Blackout Tuesday」は音楽企業幹部ジャミラ・トーマスとブリアンナ・アギェマンが提起したもので、黒人表現者たちから膨大な利益を得てきた音楽産業が一般業務を中断させることで人種問題に関する思考や行動を促すストライキ運動とされる。
結果的に、大手ストリーミングサービスの「Blackout Tuesday」は音楽消費の面でも効果をなした(参照)。Spotifyがローンチしたプレイリスト「Black Lives Matter」に掲載された同運動のアンセムとされるケンドリック・ラマー「Alright」は同サービスのグローバルチャートで歴代最高となる26位についた(参照)。チャイルディッシュ・ガンビーノ「This Is America」もUSチャート2位、グローバルでは7位に返り咲きしている。また、Apple Musicにしても、同2曲やN.W.A「F**k the Police」を並べたブラックネスを祝福するプレイリスト「For Us, By Us」をリリースし、プロテストソングの再生数増加に貢献した。
有名企業による「Blackout Tuesday」は大きな注目を浴びたわけだが、ミュージシャンやアクティビストからの批判も発生させている。象徴的なものは、SpotifyとApple Music両方のプレイリストに楽曲「FOR MY PEOPLE」を掲載された1995年生まれのラッパー、ジョーイ・バッドアスの言葉だろう。
「はっきり言っておく。大企業や、黒人ではないインフルエンサーたちの投稿やシェアになんの意味もない。“クールに見えること”をやって取り繕っているだけだ」
疑問を投げかけたミュージシャンは他にもいる。その多くは、大企業の姿勢表明が「見かけだけで実態的な支援が伴っていない」というものだ。例えば、ジャック・アントノフは「音楽企業はいくら寄付したの? 情報がまったく見当たらない」旨をツイートした。のちにザ・ウィークエンドも三大レーベル、およびSpotifyとApple Musicを名指しするかたちで寄付活動を呼びかけている。こうした寄付に関する疑念は、ある程度は時間が解決したかもしれない。Billboardによると、「Blackout Tuesday」以降、ワーナーおよびソニー・ミュージックが1億ドル規模、ユニバーサルグループが2,500万ドル規模の寄付や中長期的計画を発表していった。額面非公開ではあるが、Appleもドネーションを行ったようだ。