藤原千花「翼をあげたい」はキャラクターの心情を捉えた名曲に 杉山勝彦手がける歌詞やメロディから考察
公式で「空気が読めない」と称される藤原だが、それは彼女の、いつも自然体で平等な姿勢が作り上げた美徳だろう。〈空気を読むの定義は ひとりkeyman見定め ご機嫌をとることみたい 納得よ そんなことできないもん だってみんなが私のkeyman〉という詞が、藤原の普段は見えづらい優しさと、したたかな前向きさをよく表している。
白銀と四宮による天才同士の高度な頭脳戦が『かぐや様は告らせたい』のおもしろさの肝なのはもちろんだが、そこに一石を投じるように配置された、打算のない藤原千花という存在が、白銀と四宮の間でバランサーとなり、作品に深みを与えているのも間違いない。
さらに、「藤原千花」の声音のまま、心情の機微を表現してみせる小原好美の歌唱も見事だ。「チカっとチカ千花っ♡」でも、藤原のあどけない口調が歌の中で一切崩れることなく表現されていた。今回の「翼をあげたい」で描かれているのは、表立っては見えない藤原の内面の想いだが、そんな「新たな表情」を見せながらなお、小原の歌声はきちんと「藤原千花」を感じさせてくれる。
アニメも第2期となり、生徒会の解散、生徒会長選挙、新メンバーの加入など、新たな局面を迎えていく。はじめはぎこちなかった生徒会メンバーも、限られた高校生活を共有していくことで絆を深め、その関係性を徐々に変化させている。杉山勝彦が描いた「翼をあげたい」が藤原千花の新たな魅力を見せてくれたように、物語もまたさらなる広がりを見せてくれることだろう。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。
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