乃木坂46における「君の名は希望」と「制服のマネキン」の重要性ーー杉山勝彦の作曲力を読む

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乃木坂46の「制服のマネキン」、「君の名は希望」等の作曲を手がけた男性二人組ユニットUSAGIでも活躍する杉山勝彦(写真右)

 1月23日の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に乃木坂46が出演し、「制服のマネキン」と「君の名は希望」のメドレーを披露する。

 乃木坂46は2012年2月にメジャーデビューしていたものの、先述の2曲を発売したタイミングでは同番組への出演はなかったため、これらの楽曲は今回が番組初披露となる。また、「君の名は希望」に関しては、生田絵梨花がピアノ演奏をし、メンバーが歌唱する特別バージョンということも発表されている。

 この2曲は乃木坂46のレパートリーの中でも特に評価が高く、アイドル論者としても知られるBase Ball Bearの小出祐介(Vo/G)が雑誌連載において2年連続で「年間アイドル楽曲ベスト」に選んでいる(2012年「制服のマネキン」、2013年「君の名は希望」)。そして、この2曲の作曲を手がけたのが男性二人組ユニットUSAGIでも活躍する杉山勝彦だ。杉山は過去には嵐やAKB48、私立恵比寿中学への楽曲提供をしているほか、乃木坂46には先述の2曲以外にも「サイコキネシスの可能性」や「私のために 誰かのために」、新アルバム『透明な色』では新録曲として「僕のいる場所」や西野七瀬のソロ曲「ひとりよがり」を手掛けており、名曲メーカーとしてファンからの信頼も厚い。AKB48グループや乃木坂46で総合プロデューサーを務める秋元康も、トークライブアプリ『755』で「杉山勝彦さんは、本当に天才だと思います。大好きな作曲家の一人です」と発信するなど、グループにとって欠かせない作曲家の一人であることを示唆している。

 乃木坂46において杉山の楽曲ーー際立ってこの2曲がかねてから注目されているのは、この2曲が“乃木坂46を定義した”といえるからなのかもしれない。近年、一般的にアイドルポップスとして世の中に存在する楽曲のなかで流行しているのは、ライブで盛り上がる、アップテンポで抜けの良いもの。その王道を行くのがライバルグループであるAKB48であり、乃木坂46はこれまで同グループとは異なる道を模索してきた。初期段階では「おいでシャンプー」や「ぐるぐるカーテン」など、フレンチポップをベースとした清楚なイメージの楽曲を表題曲としてきたが、そのイメージを一変させたのが、4thシングル表題曲として発表された「制服のマネキン」だ。同曲は90'sユーロビートを彷彿させる四つ打ちサウンドとマイナーキーを多用するメロディー、6度音程内の狭い音域で歌われるサビなど、アイドルの楽曲としては異端といえるアプローチを積極的に採用。卒業や恋愛をテーマにした歌詞とも相まって、乃木坂46の新しいイメージを打ち出した。

 そして、「君の名は希望」は複雑な構成を持ちながらも、独特のキャッチーさを持つ乃木坂46の代表曲の一つだ。「Aメロ→Bメロ→Aメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→Aメロ→サビ」という複雑な“大ロンド形式”の構成を持つ同曲だが、主旋律はピアノ一本で成立するうえ、ユニゾン歌唱が活きる合唱向きの歌メロでリスナーを飽きさせない。杉山は『OVERTURE』のインタビューで同曲について「普段はフルサイズで送るんですけど、『君の名は希望』の場合は1コーラス送ったら『ほぼこれでいくから』ということになって<中略>乃木坂46にとって大切な曲になる予感がしました」と語っており、断片的にしか楽曲がなかった段階からスタッフや本人が名曲だと予感していたようだ。(参考:徳間書店『OVERTURE』)

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