『SPECIES EP』インタビュー

Crossfaith、『SPECIES EP』で感じたセルフプロデュースの魅力 新レーベル設立やヒップホップとロックにおける共通点も語る

 2020年1月に主宰レーベル<Species Inc.>を立ち上げたCrossfaith。同レーベルから5月20日に『SPECIES EP』をリリースした。メンバー全員でスタジオ合宿中の彼らにリモート取材を行い、レーベル立ち上げの経緯から、セルフプロデュースとなった今作の制作エピソード、「None of Your Business」でのJin Doggとのコラボ、またライブ活動が制限される現在の思いまでをじっくりと聞いた。(編集部)

新レーベル設立は「初心に返ったような気持ち」(Koie)

ーーCrossfaithは年明け早々に新レーベル<Species Inc.>設立を発表しましたが、改めてその経緯を聞かせてもらえますか?

Koie

Koie:Crossfaithは昨年まで<Sony Music Records>というメジャーレーベルから作品をリリースしていたんですけど、そこから巣立つという意味もありつつ、状況が刻一刻と変化していく中で、自分たちでいろんなものをダイレクトに発信したいという思いもあり、自分たちでやるからには制限なく、より自由に物事を表現できたりいろんなアクションが起こせるようにと<Species Inc.>を立ち上げました。自分たちでやったことの責任は全部自分たちに返ってくるし、自分たち以外にケツを拭いてくれる人もケツを持ってくれる人もいないという状況で、すべてを自分たちだけで行なっていくぞという決意と覚悟の表れなのかなと、俺は思っていて。もちろん、<Species Inc.>として音楽だけではなく、いろんなことに挑戦していきたいというのも含めて、新たなスタートを切るという意味でレーベルを立ち上げた感じですね。

Hiro:絵を描いている人でもいいし、映像を作っている人でもいいし、<Species Inc.>という母体を通じていろんなクリエイターと一緒に活動できたらいいなと思っています。

Koie:とはいえ、ソニーにいた頃から今のマネージャーと二人三脚でディレクションを取っていたので、自分たちでやっていたという大きな部分は変わらないんですけど、よりいいものを作る可能性を広げるためにも<Species Inc.>という自分たちが乗る船を作りたいという思いは昔からあって。初期の頃はメジャーレーベルにも所属していなくて、マネジメントも自分たちでやっていたし、そういう意味じゃ初心に返ったような気持ちというか、自分たちで自分たちのことをワクワクさせる成分が強くなったようなイメージですかね。

ーーなるほど。そのレーベル設立発表のすぐあとの2月に新曲「Endorphin」が配信されましたが、そういうスピード感がまさにおっしゃったことに直結していると。

Koie:そうですね。自分たちが作り上げたものはすぐに観てほしいし、曲はすぐに聴いてほしい。聴く人たちにとってワクワクするような状況で出したいという思いが強いので、やっぱりレーベルを立ち上げたからには一発目はちゃんと音付きで「何か来るぞ!」という……。

Teru:まあ、意思表示やな。

Koie:映画じゃないですけど、予告でワクワクさせるような仕組みは常に考えているので。そういう意味でも、2020年に入ったところからすぐに動きを見せたかったんです。

今回のEPは「1曲1曲がメインディッシュ」(Teru)

ーー「Endorphin」に続いて、4月には「Digital Parasite」も配信。そして一連の流れにおけるひとつの山場として、5月20日に『SPECIES EP』がリリースされます。前作のアルバム『EX_MACHINA』(2018年)リリース時、Koieさんは同作に対して「ある種のコンセプトアルバム」というコメントを残していましたが、今作はまた別ベクトルの作品という印象を受けました。制作に当たって、皆さんはどういうイメージを持って臨みましたか?

Teru

Teru:『EX_MACHINA』と違って、今回の『SPECIES EP』には明確なコンセプトというのはなくて、ただ「オリジナリティがあるもの」「“新しい”もの」を作りたいという思いは念頭にあって。2012年に『ZION EP』という作品を出したんですけど、そのときも1曲1曲にパンチがあって、「俺たちの曲を聴いて覚醒してほしい」みたいなデカい目的のおかげでEPとしてバランスが取れていたのかなと思っているんです。で、今回もEPとしての大きな目標として「Species=種(しゅ)」というものがあって。俺たちは昔からずっと、「自分たちの音楽で何か影響を与える」ことに対して貪欲に取り組んできたけど、今回のEPもそういった感覚で1曲1曲がメインディッシュになるように仕上がったんじゃないかな。

Koie:例えば、『EX_MACHINA』のときはがっちりした脚本を書いてから、その場面場面を描いていくような制作の仕方だったですよね。それに対して、今回はTeruが言ったように『ZION EP』に近いものがある……『ZION EP』は音で目覚めさせるという、映画『マトリックス』のレッドピル(飲むと現実を知ることができる赤い錠剤)のようなものを提示した作品だったんです。『EX_MACHINA』はコンセプトを表現するために曲を作っていってアルバムを完成させたという感じですが、今回や『ZION EP』は1曲1曲にコンセプトがしっかりあって、その中にひとつ重なる部分があると思うんですけど、それが「Species=種」を増幅させていこうということ。簡潔に言えば、“新しいCrossfaithのサウンドがここにはあるぞ”ということだと思うんですね。だから、『EX_MACHINA』と比べて歌詞にもパーソナルな内容や、よりミクロに寄った視点で書かれたものが多いかもしれない。そういう意味でも、5曲ともすごく個性の強い楽曲になったんじゃないかなと思います。

ーー確かに5曲ともタイプは異なるものの、どれもがリードトラックとして活きる楽曲に仕上がっていますよね。

Koie:本当にそういうつもりで作ったよね。アルバムだからこそある曲というのが今回はないし、色が濃い曲を並べて作ったらこうなりました。

ーー先ほど出てきた『ZION EP』って、Crossfaithの歴史においてターニングポイントになった作品だと思うんです。それに似たスタンスの作品がこの新しいスタートを切るタイミングに産み落とされたのは、必然だったのかなと。そこも含め、この先の展開が非常に楽しみになる作品でもありますよね。

Koie:そうですね。観ていただいておわかりのとおり、今はメンバー5人でセルフ・アイソレートという形でスタジオに合宿しているんですけど、立て続けにいろんなものを出していけたらというクリエイティビティに満ちていて。まだ新譜が出る前なのに、もう次を作り始めている状況です(笑)。とはいえ、今はまだブレインストーミングの状態で、具体的に何をするというのは決まってはいないんですけど、日々いろんなものから刺激を受けている最中で。今の状況だからこそできることもあるんじゃないかって、日々話し合って、スピード感を持って出していくことが大切なのかなと思います。

Hiro

Hiro:みんな動きが止まっているところではあるけど、だからこそ今、フィジカルで動けるようになったときのために準備しておこうと思っていて。今できることも山ほどあるし、それこそリスナーが新しいものを体験できる場所、新しい遊び場を作ろうと考えているところなんです。

Teru:それが映像やライブかもしれないし、まだ見ぬ未知なるものかもしれないし。やっぱりぶっ飛んだものを作りたいという気持ちが強いので、今は極秘で練っているところですね。

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