秋山黄色、泣き虫、Maica_n……ロックの系譜に連なる歌の力 気鋭ソロアーティスト3組に注目

 最後に紹介したいのが、Maica_n。5月20日にEP『Unchained』でメジャーデビューする、19歳のシンガーソングライターだ。公式サイトに掲載されているプロフィールによると、1960~70年代のロックが彼女のルーツなのだそう(参照:公式サイト)。山崎まさよしや奥田民生、Charなど、大物ミュージシャンとのセッション経験もある。『Unchained』のリード曲「Unchain」からは確かに往年のロックソングからの影響を読み取ることができる。また、歌詞に描かれた“何にも縛られず自由でいたい”という願いは、尾崎豊からBUMP OF CHICKENまで、様々なミュージシャンが時代を跨ぎながら歌い続けてきた、ロックにおける普遍的なテーマだ。

「Unchain」

 興味深いのは、その普遍的なテーマが、今の時代ならではのメッセージ性を帯びているところだ。年齢不詳で性別不詳なアーティスト名について、以前本人に聞いたところ、“男性像/女性像”的な固定観念の存在に違和感を抱いた経験があること、また、末尾の“_n”にはいくつかの意味が込められているが、そのうちのひとつは“neutral”(中立的な)であることを明かしてくれた。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』に登場する「自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」という台詞が話題になってからもう3年半近く経つが、思考の枠組みを縛る呪いの言葉は今もあちこちに存在している。一方、ジェンダーフリーやその他様々な観点から、個人の自由が叫ばれる時代に突入しつつもある。そんな社会と共鳴する形で、彼女の音楽は今後広まっていくことになるかもしれない。

Maica_nのトップトラック

 このように、骨のある歌を歌う新星アーティストが続々と出てきている。今後も3組の活動に注目しつつ、後に続くアーティストの登場を楽しみにしていたい。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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