秋山黄色に聞く、作曲への目覚めとユニークな曲作りのプロセス 「ゲームやカラオケと同じ感覚」

秋山黄色に聞く、作曲への目覚めとユニークな曲作りのプロセス 「ゲームやカラオケと同じ感覚」

 2018年に自主レーベルからリリースしたデビュー曲「やさぐれカイドー」がSpotifyバイラルチャートで2位を記録し、その後も『VIVA LA ROCK 2019』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』、『SUMMER SONIC 2019』など国内大型フェスへ立て続けに出演するなど大きな注目を浴びてきたソロアーティスト・秋山黄色が、満を持しての1stフルアルバム『From DROPOUT』を3月4日にリリースする。

 自身のセルフプロデュースとなる本作は、ソリッドかつダイナミックなバンドアンサンブルと、秋山による繊細かつドラマティックなボーカルが有機的に混じり合った楽曲が、美しくも歪なサウンドスケープを展開しながらひしめくように並んでいる。限られたコードやリフの繰り返しの中、目まぐるしく展開していくカラフルなメロディからは、彼がこれまで積み重ねてきたインプットとアウトプットの膨大な量を伺わせる。

 アニメ『けいおん!』で音楽に目覚め、曲作りはゲームやカラオケの延長線上にあると話してくれた秋山。ほとんど独学で身につけてきたという彼のソングライティングやサウンドメイキングのプロセスは、どこまでもユニークなものだった。(黒田隆憲)

ニコ動がなかったら「作曲」はもっとハードルが高かった

ーーお父さんがバンドをやっていたそうですね?

秋山黄色(以下、秋山):はい。X JAPANのような、どちらかといえばハードロックっぽいバンドをやっていたらしくて。地元、宇都宮のFM局で流れたりもしたそうなんです。なので、家にはギターがあったのですが「全然弾いてないだろ」っていうくらいボロボロで(笑)。埃まみれのアコギには弦が1本しか張ってない状態だったんですけど、それを弾(はじ)くと音が出るのが楽しかったのは漠然と覚えていますね。

ーー音楽以外のことにも興味ありましたか?

秋山:僕は1996年生まれで、中学生の頃にニコニコ動画やアニメ『けいおん!』がめちゃくちゃ盛り上がってたんですよ。周りもみんなニコニコ動画を観ていたし、今までアニメに興味なかった奴らも『けいおん!』に影響されて楽器を始めたりして。そんな中、僕も『けいおん!』とニコニコ動画にハマり、音楽だけじゃなく自分で描いたイラストを上げたり、料理の動画を上げたり、様々なジャンルのコンテンツを一通り試してみましたね。

 『けいおん!』ってバンド活動もそうですけど、高校生活がリアルに描かれているじゃないですか。自分は中学生になったばかりで、部室とかに対する憧れもあって。1話で軽音部に入って2話で楽器を買いに行く、みたいな。その楽器店の風景なんかもすごくリアルなので、なんだか疑似体験しているような気持ちになったんです。

ーー何かの音楽に影響を受けて始めたというよりは、とにかく楽器が弾きたかったと。

秋山:はい。実は小学生の頃、お祭りに参加してお囃子をやっていたこともあり、『けいおん!』を観る前からリズムに興味があったんですよ。それでドラムを買おうと楽器屋に行ったのですが、値段が高過ぎて手が出なかったので、とりあえずベースを買って帰ってきたんです。別に特別ベースに興味があったわけじゃないんですけど、もう買う気満々でお店に行ったから、何も買わずに帰るわけにはいかない気持ちになっていたんですよね(笑)。お年玉を叩いて2万円くらいの「ベース初心者キット」を手に入れました。

ーーギターは選択肢に入っていなかったのですか?

秋山:友だちと「バンドやろう」という話をしていて、そいつがギターを買うって言ってたので、自ずとギター以外の楽器を選ぶことにはなっていたんです。だから僕、今もベースが一番上手いんですよ(笑)。曲作りをする上ではギターのほうが便利なので、そこがちょっとジレンマですね。

ーー初めて手にしたギターは「ガットギター」だったそうですね。

秋山:そうなんです。結局バンドはポシャってしまい、一人でベースを練習してたんですが全然面白くなくて(笑)。それでギターが欲しいなと思っていたら、おばあちゃんがどこからかガットギターを拾ってきてくれたんですよ。本当はエレキギターが欲しかったんですけど、とりあえずそれで練習をし始めたわけです。

 ガットギターって弦も硬いしフレットもデカイじゃないですか。それが普通だと思って弾いていたので、後からエレキやアコギを持ったときに、「なんて弾きやすいんだ」と思いました。みんなよく「Fのバレーコードで挫折する」って言いますけど、そうならなかったのはガットギターで練習していたおかげじゃないかと。

ーーおばあちゃんに感謝ですね(笑)。作曲を始めたのは、スピッツの「チェリー」をコピーしたのがきっかけだったとか。

秋山:「作曲を始めよう」って思ったわけじゃなかったんです。高校生の頃、Skypeで通話しながらゲームするのにハマってて、その通話のためにちょっといいコンデンサーマイクとオーディオインターフェイスを購入したら、そこにCubase(DAWソフト)の体験版がバンドルされてて。これがあれば、ニコニコ動画の「歌ってみた」が作れるのかなと。まずは、押し入れにしまってあったベースを引っ張り出してきて録ってみたら、めちゃめちゃいい音で録れて。その瞬間に何かがパチンとはじけた気がしますね。「オリジナル曲を作ってニコ動に上げよう」という発想が生まれました。

 もちろん当時は音楽理論も何も分かってなくて。唯一覚えていたのは「チェリー」のコード進行だったんです。それで、友だちとSkypeしながらゲームをやっていたときに「チェリー」のコードを弾きながら、うろ覚えだった歌詞を適当に歌って聴かせたら、それが意外と良くて。Skypeって通話のログが残るじゃないですか。それで聞き返してみたら、その適当に歌った「チェリー」がちゃんとオリジナルソングになっていた。だから、ある意味では曲作りも偶然だったんですよね。

ーーゲームも作曲も、同じ延長線上にあるというか。あまり構えずに作曲を始めたのもよかったのかもしれないですね。

秋山:そう思います。ニコ動がなかったら「作曲」ってもっとハードル高かったと思うし。ほんと、Cubaseを触るのもほとんどゲーム感覚でしたね。GReeeeNの曲を耳コピしてCubaseに打ち込んだりしているうちに、いつの間にか夢中になっていました。

 最初に覚えたコード進行が「チェリー」だったのも、偶然だったけど良かったのだと思います。あの曲っていわゆる「カノン進行」だから、ギターでコードを弾きながら適当にメロディをつけてみると、なんとなく「いい曲風」になるんですよ(笑)。世の中には同じコード進行の曲が何個もあることすら知らないまま、そういう“遊び感覚”でやっていたのは今の曲作りにも活かされていると思います。「今、自分の手元にあるものだけ使って、最大限のものを生み出そう」みたいな気持ちとか。

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