=LOVEや≠MEら楽曲で光る、指原莉乃の柔軟な作詞力 アイドル愛に満ちた“発想力”も武器に

 そしてさらに新しい傾向を見せたのが、今回発売延期の決まった新曲「CAMEO」である。

=LOVE(イコールラブ) / CAMEO【MV full】

Hey 強気の乙女なんて
Hey いないと思ってます?
(「CAMEO」より)

 これまでの作品に通底していた“少女の儚い想い”路線から一変、異性を翻弄する“小悪魔”的な女性像が全面的に描かれている。いわゆるガールクラッシュ的な、近年のガールズグループのトレンドを汲んだ作風だ。

 かと思えば、4月6日に公開された姉妹グループ≠MEの新曲「君と僕の歌」ではさらに異なるスタイルへ挑戦。

≠ME (ノットイコールミー)/「君と僕の歌」【MV full】

夢だった この場所に立ってる
全て捨てて( (今は))
戦うんだ 挑むんだ
(「君と僕の歌」より)

 初期の日向坂46を彷彿とさせる“青春感”たっぷりの歌詞にグループのストーリー性を含ませる手法は、まさに秋元康イズムを受け継ぐもの。そして、本人がTwitterで明かしている〈すんごい雨〉へのこだわりは、むしろつんく♂的なのが面白い。

 このように自身が影響を受けてきた歌詞のスタイルを自在に使い分け、色彩豊かな彼女独自の表現も組み込みつつ、時にはK-POPのようなトレンドにも踏み込めるその“柔軟さ”こそ、彼女の特筆すべき能力だろう。あるひとつの“型”にこだわらず、歌い手のカラーや状況に応じて作風を変化させている印象だ。

 また、“アイドル想い”な姿勢も見逃せない。今回の「次に会えた時 何を話そうかな」についても、現在活動休止中の高松瞳を参加させることによって、療養中の仲間を待つグループからの温かいメッセージとしても聴ける作りになっている。こうした姿勢は、自身もアイドルとして活動していた経験からくるのだろう。

 陥った状況を即座に作品へと昇華できる機動力、作品ごとに異なるスタイルを選べる柔軟さ、そしてアイドル出身だからこその発想力。

 アイドルとして一時代を築いた指原莉乃がいま、プロデュース業でもその敏腕ぶりを発揮している。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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