南條愛乃が明かす、理想の自分を引き寄せる日々の研鑽「その時の自分にしか歌えないものを作っていくのが理想」

南條愛乃が語る、理想に近づくための研鑽

 南條愛乃が、シングル『藪の中のジンテーゼ』を4月29日にリリースする。表題曲は、アニメ『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』のエンディングテーマを担当。カップリングには、南條が結婚する友達に宛てたウェディングソング「I wish you happiness」が収録されている。

 fripSideを含めると、シンガーとして10年以上のキャリアを持つ南條愛乃だが、2020年最初にして約13カ月ぶりの最新シングルは、今の彼女だからこそできるボーカル表現が詰まった一作になった。同作の制作エピソードから、11年目を歩む歌手・南條愛乃の変化、そしてデビュー当時からブレないアーティストとしての本質を伝えていきたい。(編集部)

去年から自分の歌い方にあらためて向き合ってきた

藪の中のジンテーゼMV(試聴)

ーーシングルとしては『サヨナラの惑星』から約13カ月ぶりのリリースになりますね。

南條愛乃(以下、南條):もうそんなに経ちましたか! 早いですね。ソロでのアルバム(『LIVE A LIFE』)や、fripSideのアルバム(『infinite synthesis 5』)とツアーがあったので、その期間もなんだかんだずっと動いてはいたんですけどね。

ーー新曲となる「藪の中のジンテーゼ」は、放送中のTVアニメ『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』のエンディングテーマとして書き下ろされたものですね。アートワークも含めて、これまでの南條さん楽曲にはなかった雰囲気で。

南條:アニメが文豪たちのお話なので、楽曲にも日本文学みたいな印象がありますよね。曲自体はそこまで和のテイストを全面に打ち出しているわけではないですけど、歌詞の世界観と相まって小説を1ページずつめくって読んでいくみたいな雰囲気があるな、と。そういった楽曲だからこそ、歌う立場としてどう楽曲に接していくかっていう部分は、けっこう難しかったですね。家での練習ではどう歌ったものかとレコーディング当日まで決まらなくって。結局、スタジオで試行錯誤を重ねて作曲の藤間(仁:Elements Garden)さんと一緒に作っていきました。

ーーじゃあ、歌にはかなり時間をかけて?

南條:いや、それが案外、すんなり進んだんですよ(笑)。一文字ずつ丁寧に歌うことを大事にしつつ、細部の表現はいろいろ作りこんではいったんですけど、とてもスムーズでしたね。結果として、自分でも今までの南條ソロにはなかった1曲になったなと思える新鮮な仕上がりになりました。一度聴いただけで満足するのではなく、何度も繰り返し聴きたくなる曲になったんじゃないかなって。みなさんにもそうやって楽しんでいただけたら嬉しいです。

ーーサウンドの流れに寄り添って、パートごとに歌の表情が繊細に変化していきますよね。

南條:1曲の中に細かい感情の揺れ幅があるような雰囲気ですよね。サビではサウンドがちょっと明るくなるんだけど、歌詞はそこまでポジティブな内容でもないので、表現の匙加減はけっこう難しくって。淡々とした歌にならないように、頭を使いながらいかに言葉にニュアンスを込められるかっていうことを大事にして歌っていきました。メロ自体がけっこう難しいので、全体を通して歌った後、AメロBメロを細かく詰めていったり、みたいなこともしました。にもかかわらずスムーズに終わったっていう(笑)。

ーー曲の世界観に引っ張られたことで、歌に関しての新たな引き出しが開いた実感もあるんじゃないですか?

南條:あぁ、確かにそうですね。実は去年、ノドに長年の疲れがたまってしまってちょっとお休みをいただいた期間があって。そのときに、ノドに負担のかからない歌い方をちょっと模索したんですよ。それまでの私の歌い方は、前に押し出す力はあるんだけど、後ろに広がる空間を生かすことができていなかったので。なので、そこを意識した発声や歌い方をするようになったんですよね。その結果、去年くらいから「あぁ、こういう表現の仕方もあるんだな」っていう発見が徐々に増えてきたんです。それが今回の楽曲にも活かされたかなって。最近の私が求めている歌い方にちょうどマッチした曲でもあったので、またひとつ大きな収穫があった気がします。

ーーご自身の中での模索がいい結果を生み出しているわけですね。

南條:はい。今回のAメロはすごく音数が少ないので、歌っていると気持ちが負けそうになってしまう瞬間もあって(笑)。でも、そこを耐えてしっかり表現できたのは、去年から自分の歌い方にあらためて向き合ってきたからこそだと思いますね。きっと以前の自分だったら歌えなかったと思うので。もちろん、まだまだ発展途上ではあるんですけど。

ーー短くはないキャリアを持ちながらも、ご自身のさらなる可能性を追求していく姿勢は素晴らしいですよね。

南條:確かにfripSideを合わせると10年も歌のお仕事をさせてもらってるわけですけど、自分にはまだできることがありそうだなっていう思いはまったく消えないですからね。むしろ、その期待がどんどん湧いてくることに喜びを感じていたりもするので。自分の頭にある理想のイメージと実際の自分との誤差がどんどん減っていったらいいなって、最近はあらためて思ってますね。

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