>  > 南條愛乃に聞く、ライブが大切な場所になるまで

『LIVE A LIFE』インタビュー

南條愛乃が語る、ライブを通して築いた“大切な場所”「今までやってきたことに間違いはなかった」

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 南條愛乃が、7月24日に新アルバム『LIVE A LIFE』をリリースした。同作は、2018年に開催された『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』の各会場公演(市川/名古屋/大阪/静岡)ごとに南條本人がセレクトした楽曲を収録したライブ音源盤4枚と、「君のとなり わたしの場所」に新曲5曲を加えた全6曲収録のオリジナル盤1枚の計5枚組。南條愛乃の現時点での集大成とも言える、大ボリュームの作品となっている。

【南條愛乃】NEW ALBUM「LIVE A LIFE」初回限定盤特典ライブ映像(試聴用ダイジェスト版)

 声優として着実にキャリアを重ねる中、2012年に念願のソロアーティストデビューを果たした南條。ソロデビュー当時は人前で歌うことが苦手意識を持っていたが、活動を重ねる中でライブは彼女にとってかけがえのない場所になっていったのだという。実際、ライブ音源/映像として今作に収録されている『メモパツアー』では、過去のライブを再現するパートが設けられるなど、南條愛乃の歌手としてのキャリアをステージ上で表現。さらに新曲も、ライブから着想を得て制作されている。

 南條愛乃の中で、どのようにしてライブが大切な場所となったのか。今作の制作プロセスをはじめ、作詞やライブ、ファンとの向き合い方に対する変化、そしてデビュー当時から貫き続けている音楽に対する思いなど、心ゆくまでたっぷりと語ってもらった。(編集部)

メモパツアーを音源だけでも残したいなと

『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様

ーー今回のアルバム発売がアナウンスされたとき、まずCD5枚組という事実に驚きまして。

南條愛乃(以下、南條):確かに、あんまりないですものね(笑)。これは去年、『THE MEMORIES APARTMENT』という2種類のベストアルバムを発表して、それらを携えたツアー(※2018年9~10月に4会場5公演実施)を行なったんですけど、公演ごとに日替わりゾーンを用意していて。過去のライブツアーを追体験できるというコンセプトだったんですけど、さすがに全部を映像に残すことは不可能なので、音源だけでも残したいなと。過去のライブツアーも含めて全公演参加してくれた方もいれば、残念ながらあの公演は参加できなかったという方もいらっしゃると思います。でも、このメモパツアーをカタチにすることで、私を応援してくださる全ての人にその思い出を共有化して欲しいなと考えていたので、ツアー前から全公演音源は残しましょうという話で進んでいたんです。

ーーそもそもこのツアーで過去のライブを追体験できる日替わりゾーンを設けようと思ったきっかけは?

南條:ベスト盤を引っさげたツアーでは既存曲をやることになるので、今までのライブとどう差別化を図ればいいのか悩んでいたところ、だったらライブでは過去の公演の追体験を日替わりでできたら面白いんじゃないか? と。あとは、ベスト盤として曲を振り返るだけでなくて過去のライブも振り返るという構成にしたら面白いかなと思ったのがきっかけでした。ただ、まともにやったら曲数的に大変なことになるので、最初はちょっと怖くて言い出せなかったんですけど、ツアーコンセプトを考えているときにプロデューサーがそれに近いことをポロっと言って。「えっ、じゃあ過去の公演を思い出すようなセトリを日替わりとして、大幅に変えてやってもいいんですか?」「バンドがいいって言えばいいんじゃない?」というやりとりがあったんです(笑)。

ーー最終的にはバンドさんですものね(笑)。

南條:はい(笑)。なので、ライブとしてもこの5年間を振り返れて、5年間やり残したことがないみたいな内容にできてよかったです。でも、ツアーの音源化に関しては今年に入ってから、一回ボツになりかけたんですよ(笑)。

ーーえっ、どうしてですか?

南條:「これだけのボリューム、一体何枚組になるんだ? その中からブラッシュアップして、曲数を絞るのではダメなのか?」という話を、さすがにプロデューサーにされて。いろいろ悩みましたが、結局「当初の予定どおり残したほうがいいと思う」という結論に至ってこの枚数になりました。ただ、CDに1公演まるまる入れることは無理なので、10曲前後にMCを加えたくらいのボリュームで作業を進めていきました。

「曲をお届けしたい」意識が今は強まっている

『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様

ーーこういうライブCDをこのタイミングに発表するというのは、南條愛乃というソロアーティストがここまでちゃんとライブと向き合って音楽活動をしているってことを証明でもあるのかなと。

南條:いやあ、そんな大層なことは言えないんですけど(笑)。音源は音源としてひとつ完成形なんですけど、ライブをやっていくごとにバンドさんの演奏や自分の歌い方によって、CDとはまた違った世界観や違った良さが出てきている面も感じていて。私は今までライブ音源を発表したことがなかったので、だったらベスト盤を出したあとにそれをお届けするのもありなのかなと思ったんです。なので、ライブで披露しているバンドさんの演奏込みの音をお届けしたいっていう意味合いのほうが強いですね。CDを聴けば当時のことを思い出したり、逆に今では歌えない歌い方をしていたりするので、それはそれで好きなんですけど、例えば「believe in myself」(※2015年7月発売の1stフルアルバム『東京 1/3650』収録曲)だったらCDよりももっと力強くなっている今の歌も聴いてほしいなとか、お客さんとの掛け合い込みのバージョンも聴いてほしいなとか、そういう曲として成長している部分もあるので、それを今回のアルバムに残せたらいいなっていう気持ちでした。

ーーCDで一度完成したものが、ライブを通して別の形に成長していくような。

南條:そうですね。でも実は私、もともとライブが苦手で、できればやりたくなかったんですよ(苦笑)。初期の頃はずっとスタジオで歌っていたいというか、人前で歌うのが嫌だったんですけど、それがソロをやっていく中でどんどん気持ち的にも変わってきて。

ーーどういう理由で変わっていったんでしょう?

南條:初期の頃はソロとしての曲の世界観とか表現したいものはあるんですけど、歌やライブに関して自分に自信があるわけではなかったので、作りたい意思はあるのに披露したい欲があまりなくて。作って終わりにしたかったんでしょうね。だから、すべてに対して保身的で、「ライブで失敗したら、次のシングルを出させてもらえないかも」と怯えたり(笑)。ソロの曲は大好きなのに、お客さんもみんな温かくて優しい人たちなのに、その人たちの前で歌ってもずっと緊張で胃が痛いままだったり、とにかく失敗してはいけない、うまくやらないといけないという、来てくれる方のためというよりも自分のためのライブだったんです。でも、それが回数を重ねていくうちに、ソロでの自分のあり方にもだんだん慣れてきたというか。自然体でいていいんだっていうことが実感として持ててきたんですね。あとは、お客さんたちもライブのたびに本当に楽しそうに聴いてくれたり、終わったあとも「来てよかったです」という声を届けてくれたりして。皆さん時間もお金も作って来てくれるわけじゃないですか。その人たちを本当に満たされた気持ちで帰してあげたいという気持ちにだんだん変化していったときから、ライブがどんどん楽しくなり始めたんです。

ーーそもそも南條さん、もの作り自体が好きな方なんですよね。

南條:そうなんです。もともと絵を描くのが好きで、脳内にあるものをアウトプットすることが好きなんですよね。

ーーお話を聞いて思ったんですが、南條さんにとってライブというものがいろんな人と思いを共有しながら何かを作っていく場にシフトしていったのも大きかったのかなと。

南條:確かに、表現の一部に変わっていったのかもしれないですね。最初の頃は全部自分でやらなきゃと思っていたところがあったのが、だんだんステージのことはステージ専門の人に任せようとか、自分の意見とか提案は伝えるけど、あとは餅は餅屋でやってもらおう、と。そうやって任せたい部分も任せられる部分も増えてきたことで、次は「自分をどう見せよう」という悩みも生まれてきて。レコーディングだったら歌のことだけを考えていればいいじゃないですか。でも、ライブ会場で歌うことでCDを通して伝えるのとはまた違った……バンドさんの音があったり周りにお客さんがいたりすることで、その日しか感じられないものもあるのかなと思うと、「曲をお届けしたい」という意識が今は強まっていて。今日はどんなふうに表現できるかなとか、そういうことが個人的には楽しくなっている気がします。

変に背伸びした言葉を使わないのが日常っぽい

『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様

ーー曲をどう効果的に届けるかという点では、例えばそれがライブの衣装や演出であったり、バンドとのちょっとしたアレンジの変化だったり、そういうところに南條さんのアイデアも含まれているわけですよね。

南條:そうですね。1stライブ(※2015年9月、大阪&東京で開催した『Yoshino Nanjo 1st LIVE TOKYO 1/3650 ミンナとつながる365日×???』)からだったかな、ステージのことについて案を出させてもらうようになって。でも、それも最初は伝えたいイメージはあるけどどこまで言っていいのかわからなくて、遠慮気味だったんです。自分が違うと思ってもプロが作ってきたものに対して「違う」と言う勇気がなくて、飲み込んでしまってモヤモヤしたものが残ったりとか。でも、それが「違う」と言っていいし、そうすることでどんどんお互いの差を埋めて最終的にいいものにできたら、それがチームとしても一番うれしいことだし、そういう作業も楽しくなってきたのかもしれないですね。

ーーこれは今回の新曲の歌詞にも共通するものかもしれませんが、人とのつながり……内側のスタッフさんや外側のファンの人たちとのつながりで生まれるもの、そのつながりをより大切に考えるようになったことで表現が少しずつ変化していったところもあるのかなと。

南條:確かに。コンセプト的にもそうなんですけど、1stアルバム『東京 1/3650』は自分の過去10年間を“夢を追いかけている人”に見立てて切り出したものだったので、ある意味すごく閉鎖的だし、人との関わりもほぼない。でも、そこから考えるとどんどん広がっているというか、開けていっている気がしますね。あとは、特定の誰かが曲中の登場人物として出てきたり……それはファンの人を誰かに置き換えた擬人化像だったりもするんですけど、日常の空気感を歌いたいというのはずっと変わらない中、やっぱりそこにはどうしても誰かが出てくる。うれしいとか悲しいとか怒りとかって誰かがいて生まれるものだし、そういうのも書けるようになってきたと思うんです。そもそも私、20代のときは夢見がちな書き方だったというか(笑)。もうちょっとふんわりと抽象的に書いたり、あんまり現実味がない言葉で書いたりもしていたんですけど、そこからどんどん現実に近い、ある意味生々しい表現の仕方もできるようになってきたのかな。今回のオリジナルCDだと3曲目の「and I」なんて生活感まで見えそうな、本当にリアルな感じですしね。

ーー確かにそうですね。僕は南條さんの書く歌詞を読んでいつも感じるんですが、日常的でナチュラルな感じが手紙に似ているなと。だから世代を問わずにスッと入ってくる言葉が多いんじゃないかと思うんです。

南條:それはうれしいですね。私、あんまり語彙がないというか言葉を知らないので(笑)。でも、日常会話って別に難しい言葉を知らなくても、人とのコミュニケーションは取れるじゃないですか。それってたぶん、私が書こうとしている日常的な歌詞にも言えるんじゃないかと思って。自分が知っている言葉や言い回しだけでも、意味や言い方を変えずにアプローチを変えたりっていうだけでも、たぶん意思や意味は伝わると思うので、そういう変に背伸びした言葉を使わないのが日常っぽくていいかな、わかりやすくていいかなっていう気がしています。

歌詞の説明したほうが曲を受け取りやすくなる

『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様

ーーCDにはMCも残しています。そこで次に披露する楽曲の歌詞についての説明が含まれていたりもします。

南條:歌詞はもちろん聴く人それぞれの解釈で全然構いませんし、むしろそれが一番いい形だとは思うんですけど、特に自分が作詞したものにはエピソードがあったりするので、「実はこういう意味があったんだよ」っていうことを伝えてから聴いてもらうとまた違った見え方があるかもしれないと思うんです。「7月25日」(※『東京 1/3650』収録曲)という曲があるんですけど、実はこれは愛犬が死んだ次の日を歌った曲で。悲しい曲にしたくなかったので、祝福とかポジティブな言葉を使っているんですけど、パッと聴くと「結婚ソングかな?」と当時思っているお客さんもいたみたいなんです。それで「結婚式で流してもいいですか?」という声をいただきまして(苦笑)。

ーーご本人からしたら「やめたほうがいいんじゃないですか?」と(笑)。

南條:それはちょっと……みたいな(苦笑)。ストーリーを読むのが好きな方は歌詞を読んで曲の世界を楽しんでくれたりしますけど、そこまで歌詞に注目しない方も中にはいるので、そういう方にはライブのMCでとっかかりを作ってから歌ったほうが、言葉にも耳を傾けてもらえるんじゃないかなと。今回のアルバムだと大阪公演のCD(※LIVE CD3【岸和田市立浪切ホール 2018.10.8】)に「螺旋の春」という曲が入っていて、これは私ではなく橋本由香利さんが書いてくださったんですけど、歌詞をいただいたときに「この歌詞の意味は」という説明をテキストで送ってくれたんです。

ーーそこにはどういう言葉が載っていたんですか?

南條:「毎年同じところをぐるぐる回ってしまっていて、自分は成長できていないんじゃないか? と思うときもあるけど、それは見方を変えると螺旋階段のように実は上に登っているかもしれない。そういう生き方ができたら素敵だと思う」というメッセージが、私にはすごく目から鱗で。確かに私も毎年思い悩んだりすることや自分の成長が見えなくて悶々としたりすることもあるけど、実は螺旋階段の幅が狭くてもちょっとずつでも上がっていけたんだとしたらうれしいし、今後の人生的にもエールになる曲だなと、そのテキストをもらったときに感じたので、たぶんこれは説明したほうが皆さんも曲を受け取りやすくなると思ったんです。そうやって説明することで1曲1曲に対する皆さんの思い入れも変わったりするでしょうし、その曲自体を楽しんでもらえる今の環境というのはすごくありがたいです。

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