『コーチェラ・フェスティバル』はなぜ特別な存在になったのか ドキュメンタリーを踏まえて紐解く

 4月11日、『コーチェラ・フェスティバル(以下、コーチェラ)』の20年間の歴史を収めたドキュメンタリー、「Coachella: 20 Years in the Desert」がYouTube上で公開された。全世界の音楽ファンが注目し、そこで行われるパフォーマンスが翌日のニュースとなるほどに成長した同フェスティバルは何故ここまで観客にとって、そしてアーティストにとって特別な存在となったのか。本稿ではドキュメンタリーの内容を踏まえながら、その疑問を紐解いていきたいと思う。

Coachella: 20 Years in the Desert | YouTube Originals

多様な音楽ジャンルのクロスオーバーと、その背景にある“リスペクト”

『Coachella』

 『コーチェラ』を主催するGoldenvoiceは、1980年代から1990年代にかけてThe DamnedやRed Hot Chili Peppersといったロックバンドのプロモーターとして活動していた。そのため、初年度のラインナップにはヘッドライナーのベック、Rage Against The Machineを筆頭にロックバンドが数多く名を連ねている。また、当時のレイヴ・シーンにも多大な影響を受けていたことからThe Chemical Brothers、UnderworldといったDJも登場し、さらにはJurassic5といったヒップホップアクトまで出演しており、実は初年度の時点で「ロック、ダンスミュージック、ヒップホップ」という異なるジャンルのクロスオーバーを実現しているのだ。

 そして『コーチェラ』はそのブッキングにも”リスペクト”を込めている。2001年のJane’s Addictionを皮切りに、Rage Against The Machine、OutKastといった伝説的アクトの復活の場として『コーチェラ』が提供されるようになる。当時の音楽をレトロな物として終わらせず、しっかりと次の世代へ繋ぐ場を用意することが出来たのである。

 また、2000年代前半、アメリカ国内ではドラッグ規制等の影響でレイヴが激しく弾圧されるようになり、カルチャー自体が終焉寸前まで追い込まれてしまう。しかし、『コーチェラ』はその動きに反抗するかのように、敢えてDJアクトを精力的にブッキングするようになっていき、やがてダンスミュージック自体をフェスティバルに定着させることに成功する。

 このように、多様な音楽ジャンルのクロスオーバーと、音楽自体へのリスペクトを持つ『コーチェラ』は新鋭のフェスティバルでありながらも様々なアーティストから評価されることになっていく。

新しい音楽を求める観客だから実現出来る、挑戦的かつ今を押さえたラインナップ

 ベテラン勢の出演も目立つ『コーチェラ』だが、一方で「今、これを見せたい」というアーティストについては、流れを気にせずメインステージに起用するという大胆なラインナップもこのフェスティバルの特徴である。

 2000年代の『コーチェラ』では、当時人気の高いロックアクトがメインステージを務めることが多かったが、その中で2006年、2ndアルバムを発表した後のカニエ・ウェストがトリから4番目という枠で登場する。当時はまだヒップホップファン以外には彼のパフォーマンスに馴染みが薄い時期だったが、カニエはオーディエンスを盛大に盛り上げ、絶賛を巻き起こした。

 また、2010年にはMuseといったバンドが名を連ねる中、トランス界のレジェンドであるティエストをメインステージのクロージングに起用するという大胆な配置が話題となった。そもそも当時はDJアクトのメインステージ出演自体が異例中の異例だったが、見事に熟練のトランスセットと派手な映像・LED演出で観客を盛り上げることに成功している。

 常にクロスオーバーする現場の中で新たな音楽を求めてきた『コーチェラ』の観客にとって、そこで鳴る音楽は必ずしもロックである必要はない。だからこそ、大胆なラインナップの変化も好意的に受け止められるのである。

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