Perfume、次なる野望はどこへ向かう? 『Reframe』で新たなスタンダード確立するか
『コーチェラ』での健闘とベスト盤でのキャリア総括
「今年の3月からは約2年半ぶりの北米ツアーが始まり、さらに4月には世界のポップミュージックのショーケースともいうべき『コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル』への出演も決まるなど、この春の活動はPerfumeの今後の海外戦略における試金石となる。
先日発表されたコーチェラの出演者一覧におけるPerfumeの文字は小さく(一方で同じアジア勢のBLACKPINKはヘッドライナーに次ぐ位置づけである)、グローバルにおけるこのグループの実勢を突き付けられたような気持ちにもなる。ただ、こういった逆境こそ、Perfumeにとっては「燃えるシチュエーション」だろう。今年の夏を迎えるころに、世界中で「Perfumeやばい!」という声が広がっていることを大いに期待したい」(Perfumeが次に越えるのは“世界”への境界線? 挑戦の1年振り返りと2019年への期待)
これは今年の2月、世界を転戦する直前のPerfumeについて期待を込めて書いた原稿のラストである。
すでに2019年の終わりの音も聞こえてきた現在、この期待はめでたく成就しただろうか?
現時点で、たとえば海外で特定の曲が大ヒットしたというような具体的な事実は確認されていないと思われる。ただ、『コーチェラ』において何らかの爪痕を残した、とは言うことができるだろう。彼女たちの初週のパフォーマンスは、チャイルディッシュ・ガンビーノやビリー・アイリッシュとともに『Rolling Stone』選定の「Coachella 2019: The 16 Best Things We Saw」にチョイスされた(参照)。YouTubeでも放送された2週目のステージでは、「だいじょばない」でリアルタイムエフェクトを披露するなど「Perfumeらしさ」を存分に発揮。会場での評判も上々だったようである(参照)。
大いに刺激を受けたであろう海外ツアーの日々を経て、夏には各局の大型番組で新曲「ナナナナナイロ」を披露。合わせて、9月18日にはキャリアを総括する3枚組のベストアルバム『Perfume The Best “P Cubed”』をリリースするとともに、各所から熱望されてきた日本国内での「サブスク解禁」に踏み切った。これを機に、また新しい形でPerfumeの音楽の魅力に触れる人が増えるはずである。
新曲であると同時に実は中田ヤスタカがPerfumeをプロデュースする前から元曲が存在していたという「Challenger」で始まり「ナナナナナイロ」で終わる『Perfume The Best “P Cubed”』は、中田ヤスタカによるリマスターによって過去曲の聴こえ方がだいぶ異なっているのも印象的である。また、年齢を重ねていく中で3人の歌声がより大人びていくさまも彼女たちの歴史を感じることができる。だが、それ以上に、Perfumeが歩んできた楽曲面での進化を追体験できることが今作の存在意義として大きいように思える。
エレクトロ風味を基調としながらメロディでJ-POPとしての汎用性を担保するという大きな構造をベースに、特に現時点でのキャリア後期においてはEDM、トロピカルハウス、フューチャーベースなどを時期に応じて導入してきた彼女たちの楽曲群は、ヒットチャートの常連であると同時に海外のダンスミュージックの潮流との出会いを演出するものでもあった。「売れているものが尖っている」という「言うは易し、行うは難し」なテーゼをPerfumeは常にハイクオリティで実現してきたことを、このベストアルバムは改めて気づかせてくれる。