「#Challenge」企画、プロデューサー同士のオンラインバトル……自宅でも楽しめるUSのR&Bムーブメント
“おうち時間”が長くなってから、R&Bに関する話題を耳にする機会が俄然増えたように思う。普段からR&Bが常にそばにある身としては、今なぜ? とも一瞬思ったが、たしかに夜遊びが常なタイプでも、家でひとり夜通しクラブバンガーばかり聴くのは辛いのでは、と考えれば納得。パーティーチューンでもちょっと切なかったり、なんとなく口ずさめるロマンチックな曲もたくさんあるし、恋人と一緒でもそうじゃなくても、心の平穏を取り戻すのにR&Bは最適な音楽なのかもしれない。
Instagramでは「#90sRnBChallenge」なるハッシュタグの投稿が溢れ、自分の思い入れのある90年代R&Bの動画や画像を投稿して、次に回す人をメンションで指名するというリレー形式の遊びがブームとなった。「Stay at home」=家でいることをSNSで呼びかけることが増えるにつれ、国内外問わずこういったリレー形式のチャレンジが流行となり、ほかのジャンルでも似たようなチャレンジが行われているが、少なくとも自分の周りでは「#90sRnB」のハッシュタグ使用率が圧倒的だ。
DJやダンサー、クラブ好きなリスナーたちがこぞって投稿する1曲はどれも大名曲の嵐(そもそも1曲なんて選べるわけがない)で、「知ってはいたけれど最高だよね、やっぱり」と再確認しているようで嬉しい。10代や20代からの投稿も多く、たとえリアルタイムで聴いていなくても、なんだか青春の香りがするのが90年代音楽のマジック。投稿のほとんどが、24時間で消えるストーリー上で行われているので後追いはしづらいが、これも一種の立派なR&Bムーブメントだ。
スーパースターが歌で祈りを繋げるゴスペル・チャレンジ
ではR&Bの本拠地アメリカではどうかというと、まず話題に上がったのが、ブラックコミュニティで絶大な支持を得ている映画監督のタイラー・ペリーが発起人となった「#HesGotTheWholeWorldChallenge」だ。マヘリア・ジャクソンやニーナ・シモンの歌唱でも知られるゴスペルのスタンダード曲「He’s Got The Whole World In His Hands」の一節を歌う、いたってシンプルなチャレンジだが、最初に回したバトンの先がすごかった。ゴスペル界の名門クラーク一家やヨランダ・アダムスに、ジェニファー・ハドソンやファンテイジアといった歌自慢の大物たちが勢揃い。さらにはオプラ・ウィンフリーといったセレブリティも巻き込んだ巨大バトンとなり、ひとつの歌を通して祈りを捧げた。
こういった「おうちで歌唱」系のプロジェクトの楽しさは、マイクを介さない歌声が聴けるところにもある。ステージさながらの歌い上げっぷりもいいけれど、パフォーマンスモードではない脱力シンギングに、その人本来の実力を感じることも多い。のっけからホイッスル全開のマライア・キャリーに、喋っているくらいラフな歌唱でも歌がうまいのがわかるアッシャー。YouTubeにまとめられているだけでも計80人以上が参加したチャレンジは、それぞれのキャラクターを楽しみながら観るのがオススメ。ちなみに個人的なお気に入りは、見事にニューオリンズバウンスへと落とし込んだビッグ・フリーダと、どうしてもセクシーなR&Bソングに聴こえてしまうタンクです。