上田麗奈『Empathy』、早見沙織『シスターシティーズ』……クリエイターとのコラボで増す歌声の魅力
3月18日にリリースされた上田麗奈のアルバム『Empathy』には、Kai Takahashi(LUCKY TAPES)やORESAMAと言ったシティポップ系アーティストが参加して話題を集めた。また、25日にリリースされた早見沙織のミニアルバム『シスターシティーズ』には、ジャズアーティストのKenichiro Nishiharaや堀込泰行などが参加。クリエイターとのコラボによって、どちらも歌声の魅力が何倍にも増し、アーティストとしてさらなる進化を遂げている。
ウィスパー調の歌声が渋谷系由来の楽曲とマッチ
アニメ『SSSS.GRIDMAN』の新条アカネ、『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』のグレイ、『ダーウィンズゲーム』の狩野朱歌など、どこか闇を抱えたヒロインを演じることが多く、キャラクターの魂が宿った鬼気迫る芝居に定評がある上田麗奈。2016年のアーティストデビュー作となったミニアルバム『RefRain』は、彼女の胸の奥に広がる内省的な世界が表現されていたが、最新作である『Empathy』では、その『RefRain』から一歩外の世界に踏み出す勇気を持った作品になったという印象だ。それを引き出しているのが、シティポップ調の楽曲だ。
ORESAMAが作詞作曲を担当した「あまい夢」は、グルーヴ感のある軽快なリズムを中心に、シンセやギターカッティングがアクセントになった極上のポップナンバー。上田の歌声は、優しくふんわりとした雰囲気で、楽曲に独特の浮遊感をプラスしている。ポイントで聴かせている囁くような歌い回しや、包み込むようなコーラスは、眼福ならぬ耳福といったところ。ORESAMAのコンポーザーの小島英也は90年代の渋谷系からの影響を公言しており、当時の渋谷系ではウィスパーボイスのカヒミ・カリィを筆頭に声を張らないボーカルがメインストリームだったことからも、空気成分を多く含んだ上田の歌声は、ORESAMAの持つ渋谷系由来のポップセンスと好相性だったと言える。
意中の人を遠くから見つめて甘い夢を見ている気持ちを歌った歌詞からは、どこか自分に自信が持てず積極的になれない主人公像が想像され、人見知りの上田らしい世界観だと言えるだろう。一聴すると春らしいウキウキとした恋の歌だが、どことなく寂しさをも感じさせるのは、彼女自身のキャラクターによるものなのかもしれない。
『Empathy』には他に、本人が作詞を手がけ、Kai Takahashi(LUCKY TAPES)が作曲した、ホーンとシンセのサウンドのなかで演じるように歌う「アイオライト」。シンガーソングライターのChimaが作詞作曲を手がけ、アコギやオルガンの音色が心地良い「きみどり」、感謝の気持ちを込めて本人が作詞した明るく広がりのある「Campanula」など収録。全曲参加クリエイターとディスカッションが重ねられ、タイトル通り“共感”により生まれたアルバムだ。