NHK連続テレビ小説『エール』主題歌、GReeeeN「星影のエール」 裕一と音の関係性が浮かぶ楽曲に

『エール』に寄り添うGReeeeN主題歌

 筆者が主題歌を聴いて最も印象的だったのが、サビ頭の〈星の見えない日々を越える度に〉〈光照らすその意味を知るのでしょう〉というフレーズ。タイトルにもある「星影」という言葉は、「星の光」「星あかり」といった意を指し、4人は「そばにいる大事な人との人生を照らしあえる星影であれますように」ともコメントしている。

 この歌詞から思い浮かんだのは、裕一と音の夫婦としての関係性。第1回からは、裕一は少し頼りなく、緊張しいの人物で、そんな夫を妻である音が力強く引っ張っていくというコンビであることが分かる。そしてもう一つイメージしたのは福島のこと。GReeeeNは「来年、2021年は東日本大震災から10年となります。戦後、多くの方が古関さんの作られた音楽に支えられたように今作の主題歌『星影のエール』も、日々起こる人生の大事な場所で支えになれたらうれしいです」とメッセージを贈っている。

 今もメディアに顔を出さずに音楽と歯科医の仕事を両立しているGReeeeNは、2011年にメンバーが福島で東日本大震災を経験。リーダーのHIDEは被災者の遺体を検死する作業に携わっていた。同年スタートさせた震災復興プロジェクト『Green boys Project』をはじめ、GReeeeNには復興への意識が薄れてはいけないという思いがある。そんなメンバーの思いは広く福島の人々に伝わっており、2015年には福島県郡山駅の新幹線ホームのメロディに「キセキ」、在来線ホームでは「扉」が使用されている。また、2016年にリリースされた「始まりの唄」MVは、同年3月に閉校となった福島県東白川郡矢祭町立関岡小学校の最後の日々を映したドキュメンタリーに。先生とのやり取りを経て、GReeeeNのメンバーがグループを育んだ福島県への恩返しの気持ちを込めて、コラボレーションを逆提案したという。

 これから半年間、「星影のエール」は『エール』という作品を照らし、時には裕一と音の2人や、その周辺の人々の姿をより色濃く想像させていくことだろう。そして、楽曲が持つ意味を越えて、この曲が福島にとって日々の一番星になることを願う。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
NHK総合にて、3月30日(月)より放送開始
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる