角銅真実、寺尾紗穂、菅野みち子……聴き手のイマジネーションを膨らませる、女性シンガーたちの“親密な歌”

菅野みち子:初のソロ作に見える多彩さ

 最後に、秘密のミーニーズのボーカリスト、菅野みち子のソロアルバム『銀杏並木』について。秘密のミーニーズの音楽性は、Grateful Dead的な(あるいはジャム・バンド的な)長尺のソロが展開される、サイケデリック・ロック色が強いもの。筆者は彼らのアルバムを愛聴していたので、ソロになって「どう出るか?」とやや構えて聴いたのだが、こちらはよりナチュラルでオーセンティックなサウンドでまとめられている。資料にはキャロル・キングやジョニ・ミッチェル、カーラ・ボノフの名前が引き合いに出されているが、本人はCHARA、安藤裕子、原田知世、クラムボン、大貫妙子といったシンガーを愛聴しているとのこと。

秘密のミーニーズ〜名まえの無い鳥【PV】
菅野みち子『銀杏並木』

 『銀杏並木』は、そうした彼女のリスナーとしての幅広さがそのまま曲調の多彩さに繋がっている、という感じだ。そして、「走るあなたの光」のようなカントリー・ロック調の曲を聴いて連想したのが、フリーボがインディ時代にリリースした『すきまから』である。喫茶ロック界隈に括られたりもした作品だが、菅野の瑞々しいヴォーカルはフリーボの吉田奈邦子に近いものがあるように思う。

 また、サウンド的にはフリーボの面々が愛聴していた、アメリカのルーツロックやオルタナカントリーと称された一群にも通じる面もある。具体的には、ルシンダ・ウィリアムスやエミルー・ハリスといった大御所に通じるスケールの大きさと深いポテンシャルを秘めている。そう思ったのだった。まだこれが初ソロアルバムなので未知数な部分もあるが、逆にのびしろはいくらでもあるわけで、今後の活動にも期待したい。

菅野みち子「銀杏並木」
菅野みち子「うそつき泣き虫」MV

 彼女たちの音楽性をひと括りにはできないが、いずれも聴き手との距離の近さや親密さを宿しているところは共通項だろう。また、聴き手がイマジネーションを膨らませられる余白や余地、隙間が設けられている、というところも。あるいは、内省的でパーソナルな表現でありながら、多くの人に開かれている、というのも通底していると要素と言える。

 角銅真実は以前筆者がインタビューした際、「投げかけた音楽が遠くの知らない人に届いて、その人の中で変容していくような音楽ができればいい」と話していた。三者のアルバムから聴こえてくる音楽から何を受け取るか? 彼女たちの発する静かな問いかけに、耳を傾けてみてはいかがだろうか。

■土佐有明
ライター。『ミュージック・マガジン』、『レコード・コレクターズ』、『CDジャーナル』、『テレビブロス』、『東京新聞』、『CINRA.NET』、『MARQUEE』、『ラティーナ』などに、音楽評、演劇評、書評を執筆中。大森靖子が好き。ツイッターアカウントは@ariaketosa

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