氷川きよしが与えてくれた「自分らしくいればいい」という希望 SNSやパフォーマンスから伝わるメッセージ

氷川きよしが与えてくれた「自分らしくいればいい」という希望 SNSやパフォーマンスから伝わるメッセージ

 演歌の花道を20年間止まることなく走り続けてきた国民的歌手。そして、メイクアップ、カラフルなネイル、ツヤツヤの長い髪、華やかなドレス、色とりどりのアクセサリー、すべすべ素肌の美脚……女性だけのものとされていたその武器をもって、「いま最も美しい姿」を追求し続けている令和の氷川きよしさん(以下、kii様)。

 1995年NHK歌番組で見出されるも、藤あや子さん・伍代夏子さんら女性歌手全盛の時代に、若い男性の演歌界デビューは相当な博打。男性歌手というだけでいくつもの芸能事務所に断られ続けました。長良プロダクション(現・長良グループ)を訪れたkii様は、故・長良社長の目の前で、一世一代の歌を披露。事務所に響き渡るその声を聴いた社長は「上へキューッと押し切れる声。そういう爽やかな声に出会えるのをずっと待っていた。だからあの声を聴いて、よしやろうと三分で決めた」と語っています。(※1)2000年、かの有名なフレーズ〈やだねったら やだね〉の「箱根八里の半次郎」でデビュー。以降の快進撃は誰もが知るところですが、不景気も不穏な時代の空気もスコーンと突き抜ける、声そのものが持つ明るさが、当時の「演歌で男性歌手は売れない」という壁を打ち砕いたのでしょう。

 スラリと華奢な体躯に茶髪にピアス、少女漫画の王子様のようなデビュー当時の姿に、股旅物といえば潮来刈りに着流しという固定観念が吹き飛んだことを、今でも鮮烈に思い出します。当時21歳ながらも「少年」を感じさせ、性別の境にあるアンドロギヌス的魅力を持っていた彼も、歌手活動20周年を迎えました。

 そして「きよし君」は「kii」へ、ファビュラスに花開きます。

 「これまでは、本当の自分を出さないように、出さないように生きてきた。女性っぽさとか透明感とか、美について自分は色々な見せ方を持っていても、出しちゃダメと思いながら、精一杯頑張ってきた。けれど、素直な気持ちを言わず生きてきたって思いも募って……」

「そもそも演歌というのは様式美、つまり、こうあるべきという型がある。日本独特の素晴らしい音楽だけれど、その中に収まらない「自分の性分」というものもあって」

「今までの苦難も含めて全部をさらけ出し、歌にのせて表現することで、こんな私でもここまで頑張って生きてこられたんだ。そう伝えるのが歌手としての使命。人生の後半は、それを表現していく生き方をしたい」(※2)

 彼は自らの信じる美を解放し、ステージで、テレビ番組で、そしてInstagram(※3)で華麗に発信し始めました。

 日々の投稿では、自らの「美」を肯定するパワーが強く感じられます。セルフィー(自撮り)からは、照明や色合いのほんのちょっとした変化で印象が大きく変わることを知り抜いた、ステージに生きる人ならではのこだわりと、画面全てを自分自身でコントロールできる喜びが伝わってきます。謙遜や自己卑下とは無縁の清々しいまでにポジティブな姿勢は、アイドル・道重さゆみさんが「よし!今日もカワイイ」と鏡の前で自らを鼓舞する姿を連想します。「男は男らしく、女は女らしくあるべし」という思い込みも、美を謳歌するkii様の輝きの前では、吹き飛んでいきます。

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