クリトリック・リスの“口パクライブ”、ceroの“ライブ有料配信”……現状を乗り越える音楽シーンの新たな取り組み
また、同じく大阪では、3月5日に難波ベアーズで山本精一による『コロナ調伏撲滅祈念、山本精一絶叫無観客ライブ』が開催。こちらは無観客・無配信の完全クローズドライブ。大阪のアンダーグラウンドシーンを代表する難波ベアーズらしい試みだ。
さらに、3月27日は心斎橋のCONPASSでVMOによる防護服&マスク着用必須の着席ライブが開催予定。普段は過剰なモッシュが頻発するVMOの特性を逆手に取った形だ。防護服はVMOが配布。発表時のリリースには「是非この機会で如何にVMOが鑑賞にも耐え得るグループかを体験していただけたらと思います」というユーモラスな言葉が添えられている。
3月に入り、無料配信でのライブ映像提供が相次ぐ中、カクバリズムは全国ツアー中のceroのライブの有料配信を打ち出した。
これは電子チケット販売プラットフォーム「ZAIKO」と提携して行なわれた新しいサービス。電子チケット料金は1,000円。購入時に500円単位で投げ銭を追加できる。購入者は1週間アーカイブを楽しむことが可能だ。
配信開始は3月13日21時。仕事帰りの社会人に配慮したのか、若干遅めの時間からのスタート。照明やカメラ、そして肝心の音質も行き届いたスタジオライブを約1時間行い、金曜の夜を盛り上げた。終了後に、アーカイブは配信時より高画質になる旨、カクバリズムのTwitterからアナウンスもあった。ID登録からチケット購入までの手続きもスムーズで、今後も同サービスを利用するアーティストは増えていきそうだ。
カクバリズムの代表・角張渉は開催に当たり「(前略)有料でのライブ配信を開催するに至ったのは、いつまでこの状況が続くかも見えない中で、この有料配信が少しでも形になれば、全国のミュージシャン、ライブハウス、さらには演劇関係者など皆さんの活動の基礎となる部分をフォローできる、ひとつ明るい材料になるのではないかなと考えたからです。(中略)他のレーベル、マネージメント、バンド、アーティストの方々はこのやり方に興味がありましたらご相談ください。何かお力になれたらと思います」と前向きな言葉を発している。
【cero】初の電子チケット制によるライブ配信''“Contemporary http Cruise”を明日21時より開催します!ガッチリ燃える最高のライブをお届けしますので、是非ご参加ください。有料配信についての代表の角張からのコメントもあります。詳しくはこちら→https://t.co/1iqbRqesX2 pic.twitter.com/8neZHSsDd7
— カクバリズム (@kakubarhythm) March 12, 2020
また、ロフトグループの系列店で、音楽関連イベントの開催も多いROCK CAFE LOFTでは、運営スタッフからの提案により日頃ロフトグループと縁の深い“アイドルオタク”が、呑み会や上映会に会場を使うという取り組みも。
『なげきを許すな』と題した呑み会を行い、26名を集客したなげき氏は、当日の様子を「毎週のようにライブハウスに集まっていたオタクたちだからこそ、今のライブハウスがおかれている危機的な状況も言わずとも理解しており、お酒を頼んだり食事を頼んだり、積極的に店にお金を落とそうという暗黙の動きが見て取れました」と語った。
自粛要請により、エンターテインメントを取り巻く環境が大幅な縮小を求められる中で、アーティスト、運営、ファンと立場は違うものの、多くの人々が再建のために奔走している。収束の見通しが立たない現状だが、それぞれの立場で知恵を絞ることが、音楽と音楽に出会う場所の維持につながるのではないだろうか。
■池田智
サブカルチャー、フェミニズム、労働が関心領域。音楽は地下アイドルやラップミュージックを聴いている。
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