『温泉むすめ』SPRiNGSが未来へ繋ぐ“湯夢色バトン” 3DCGハイブリットライブに感じた可能性

SPRiNGSが未来へ繋ぐ“湯夢色バトン”

 続けて、メンバー9名が全員揃って「70億分の9の奇跡」を序盤からいきなり披露。「70億分の9の奇跡」は、SPRiNGSの“これまで”を語る上で特に欠かせない一曲だ。だからこそ、メンバー同士が曲中で優しくハグを交わし合う様子に、客席もどこかエモーショナルな雰囲気に包まれていたように思う。

SPicA

 4曲目以降は、ユニットやソロ単位での楽曲を歌唱。なかでも特筆したいのが、桑原由気(有馬楓花役)による、ミュージカル風の電波チックな新曲「あ・り・ま・す・か?」だ。同曲では、桑原がもつ元来の幼さや愛嬌が、有馬楓花が歌うキャラクターソングとしての個性を引き出しており、声優自身の性格がキャラクターのもつ可能性をさらに押し拡げるかのようでもあった。そもそも温泉むすめとは、各温泉地の源泉から生まれた“下級の神さま”であるが、高橋花林(秋保那菜子役)がこの後のMCで「かわいい!」と大絶賛していたことを踏まえるに、桑原には“温泉地に誘う天使”といった形容が相応しいのかもしれない。

しゃんぷ~はっと

 本編終盤には、メンバー全員が再びステージに出揃い、「未来の彼方」や「青春サイダー」をパフォーマンス。なかでも、ソカやサンバの音楽的要素を取り入れた“タオル曲”「青春サイダー」では、会場全体がまさにお風呂上がりのような“ぽっかぽか”な状態に。それにしても、年末の締めくくりに浴びる「青春サイダー」は、低音の鳴りが違う。

雪月花

 本編最後に披露したのは、ライブタイトルにも掲げられていた新曲「湯夢色バトン」。この日のライブを振り返れば、前述したような全国各地に点在する温泉むすめたちの強い想いをSPRiNGSが受け取り、ライブパフォーマンスやファンへの感謝を通して、また新たなパワーを重ねて全国へと再び贈り届ける儀式のようなものだった。メンバー同士が手と手を取り合ったり、お互いを労い励まし合うよう優しく肩に手を置いたりした「湯夢色バトン」の振り付けもまた、全国の同志に向けたメッセージだったのかもしれない。

 それらを踏まえるに、想いに想いを託す“バトン”という言葉以上に、この曲のタイトルに相応しいものはないだろう。その証拠となるのが、温泉むすめ全員で歩み続けた2019年の実績であり、それらを受けたこの日のパフォーマンスからは、作品全体に一貫した「日本全国の温泉地を盛り上げて、日本を元気にしたい」という想いを存分に感じられた。

 ライブ終盤には、2020年以降にSPRiNGS全キャラクターのソロ楽曲、ならびに3DCGが制作されることも明かされた。今でこそ全国の温泉地には、その土地の温泉むすめたちのキャラクターパネルが設置されているが、実際に観光ガイドなどとして機能する3DCGが形となれば、これまで以上に多くの観光客との接点として、ますます各地を賑わせてくれる存在となるに違いない。

 そんな今後の明るい展望と、すべての温泉むすめを代表したSPRiNGSによるステージを総括した時、「70億分の9の奇跡」に登場する〈坂道を駆け上がってく〉というフレーズが自然と思い浮かんだ。彼女たちの活動は、着実なステップアップを見せている。だからこそ、SPRiNGSがこの日に繋いだ“湯夢色バトン”も、途切れることなく続いていくのだ。

『温泉むすめ』公式サイト

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