Burial、Squarepusher、田中フミヤ、DÉ DÉ MOUSE……小野島大が選ぶエレクトロニックな新譜11選

田中フミヤ『Right Moment』

 日本人アーティストの作品を。田中フミヤ3年ぶりの新作『Right Moment』(Perlon /Music 4 Your Legs)。電気グルーヴ(石野卓球)、ケンイシイと並び日本にテクノを定着させた最大の功労者ですが、2011年以降はベルリンに居を移し、世界を股にかけた活動をおこなっています。今作は前作に続きベルリンのミニマルテクノの総本山<Perlon>からの1作ですが、前作ほどストイックに突き詰めたミニマル一辺倒ではなく、一部の曲ではボイスサンプルを使いアレンジもファンキーに、カラフルになるなど、全体的に取っつきやすく聴きやすい作品となっています。それでも最近のサービス過剰なポップエレクトロニカに比べれば十分ストイックですが、内容は充実。ここ最近の彼の作品でもベストと言える内容ではないでしょうか。ストリーミング配信はされていない模様。

Fumiya Tanaka - Right Moment
Fumiya Tanaka - Live Like Music
DÉ DÉ MOUSE『Nulife』

 DÉ DÉ MOUSEの新作『Nulife』(not records)は、この人らしい瑞々しく多幸感溢れるポップセンス全開の楽しい作品。声ネタを多用し、人懐っこい歌ものポップとダンサブルなビートがぴったりはまった最高のパーティーアルバムです。アルバムごとにコンセプトをしっかり立てて、同じことの繰り返しをしない人ですが、今回のような作風が彼にとっての王道という感もあります。

DÉ DÉ MOUSE / Heartbeat from "Nulife"
Serph『Nanotech Wizard』

 そのDÉ DÉ MOUSEと共演盤も出していたSerphの『Nanotech Wizard』(noble)。昨年配信限定で9カ月連続リリースしてきた曲にCDのみ収録の未発表新曲1曲を加えた全10曲。この人らしく繊細で美しいエレクトロニカが聴けますが、今回はボイスサンプルを多用したエレガントなポップチューンが満載。サウンド作りとアレンジの巧みさは飛び抜けたものがあります。坂本龍一やAphex Twinのような人たちに影響を受けた音楽ですが、それらを超えたファンタジックな箱庭世界は、良質なアニメーション作品を見るようなイマジネーションを与えてくれます。限定1000枚の特殊ジャケ仕様盤で出る模様。
レーベル公式サイトはこちら

 ではまた次回。

RealSound_ReleaseCuration@Dai Onojima

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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