Last Electroが語る、終末SF観とバンドの表現の共通点「みんなが隠し持っている“ドロッとしたもの”を暴きたい」

Last Electroインタビュー

「いろいろ考えて結局何もしない」より「とりあえずやってみる」(Kan Sano)

ーーさっきおっしゃっていた、内側に潜む「暴力性」のようなものを、ラスエレではどんなふうに表現していますか?

Sano:例えば重低音の作り込み方、そこは僕らの要でもありますね。その上にひんやりとしたシンセやボーカルがレイヤーされている感じ。もちろん、それってここ最近の音楽の流れでもあると思うんですけどね。

ーー「音像」への意識は以前のインタビューでも詳しく語ってくださいましたが(『Kan Sano率いるLast Electroが語る、最先端のバンドサウンド』)、ここ最近の流れについてはどのように捉えていますか?

Yusuke:LAビートシーンがその最前線だと思うんですけど、そこで活躍している人たちは確実に次のフェーズに入っている感じがします。ダキムが昨年暮れにリリースした『Youdecide』を聴いた時にそれを強く思いました。彼の場合、さっき話したアンディ・ストットと通じるところもあって。

Sano:個人的には音数が少なければ少ないほど新鮮に感じますね。ビートが入っているけどベースが抜けていたり、ベースとリズムだけで、コード楽器がなかなか入ってこないとか。それこそビリー・アイリッシュもそうですよね。

Ippei:ビリー・アイリッシュ、結婚して欲しいくらい好きです。

(一同笑)

Sano:「Bad Guy」の音数の少なさは衝撃でしたね。なのに、低音はやたら効いてるっていう。

Ippei:メロディすらリフに聴こえますよね。

Sano:ベースとキックと歌だけでしばらく進んでいくとか、これまでのポップスではあり得なかった。それを成立させているのが凄いし、彼女によってポップミュージックも次の次元にいった感じがします。

ーーところで今作『closer』は、アートワークも印象的です。個人的には矢野顕子の1stアルバム『JAPANESE GIRL』(1976年)を思い出しました。

Sano:もともとは自主でミュージックビデオを作ろうと思って、知り合いのシンガーソングライターのKacoちゃんに声をかけて僕が撮影したんです。その映像ストックの中から「いいな」と思う瞬間を切り取って加工しました。赤と白のコントラストを強くしたことで、「海外から見た日本人女性」っぽいイメージになりましたね。どこか得体の知れない雰囲気もあって気に入っています。

ーーちなみに、海外進出への意欲はありますか?

Yusuke:東南アジアに行ってみたいです。「今後、世界的に盛り上がるのは東南アジア」と言われていて、実際ベトナムへ行くといろんなところで再開発が進んでいるんですよ。数年後に行ったら見違えるような街並みになっているのだろうなって。しかも、街中は若い人ばかりで活気に溢れている。

ーー先ほどヴェイパーウェーブの話が出ましたが、今ヴェイパーウェーブやフューチャーファンクがアジアで盛り上がっているのも、日本のバブル時代と重なる部分があるからかもしれないですね。では最後に、今後のラスエレの抱負についてお聞かせください。

Sano:さっき、「Pentatonic Love」がレコーディングの最後の方に出来たと言いましたが、この曲はJun Uchinoくんにロックっぽいカッティングを入れてもらって、それがものすごくしっくりきて。「Junくん、こんな感じもいけるんだ」と思って、次の曲へのモチベーションにつながったんです。曲を作るたびにそういう新たな発見があり、そこでまたやりたいことが増えたり、変わってきたりするのが楽しいんですよね。ラスエレはきっと、そうやって常に模索しながら進んでいくバンドだと思うので、「いろいろ考えて結局何もしない」ってなるより「とりあえずやってみる精神」で今後も進んでいきたいです(笑)。

■リリース情報
『closer』
発売:2020年1月15日(水)
価格:¥1,800(税抜)
トラックリスト:
1. Pentatonic Love 
2. When You Kill Me
3. Night Symphony
4. Donka
5. HBC-8
6. AKIRA SENTIMENTAL
7. Highlight

■ライブ情報
2月15日(土)東京・代官山 UNIT

Last Electro Twitter

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