Last Electroが語る、終末SF観とバンドの表現の共通点「みんなが隠し持っている“ドロッとしたもの”を暴きたい」

Last Electroインタビュー

「死」や「暴力」に直面すると、生きていることを実感できる(Kan Sano)

ーーディストピアといえば、「I'm Yours Tonight」のミュージックビデオは「デヴィッド・リンチ的な世界観をDIYで表現した」とおっしゃっていましたよね。今回の作品資料にも「リンチやキューブリックなどカルト映像作家に通じる終末SF観」とありましたが、さっきIppeiさんが引き合いに出していたレフンの『ドライブ』にも、終末SF観が漂っていました。

Ippei:ああ、確かに。

Sano:そういえばKan Sanoとしての活動で、ファンと一緒に映画を一緒に見るという企画があって。そこで『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』を上映したんですけど。

ーーダーク過ぎます!

Sano:お客さん、みんな怖がっていました(笑)。(自分は)基本的に明るい性格なんですが、作品は暗いものが昔から好きなんですよね。どうしてだろう……。(しばらく考えて)今ってバーチャルなものが周りに溢れていて、「生きている」という実感を持つ機会が少なくなっている気がするんです。でも「死」や「暴力」に直面すると、生きていることを実感できるじゃないですか。そういう感覚を、もしかしたら映画に求めているのかもしれないですね。あと『チコちゃんに叱られる!』(NHK総合)の、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」というセリフは名言だし「そういうことだよな」って思うんです。北野武監督やキム・ギドク監督の作品が好きなのも、同じ理由なのかも。

 今、僕らは東京に住んでいて、表層的には全てが上手くいっているんですけど、その下でみんなが隠し持っている「ドロッとしたもの」を暴きたいというか。ラスエレだったらそれをやってもいいかなと思っているんですよね(笑)。

Ippei Sawamura

Ippei:さっき『おやすみプンプン』の話が出たじゃないですか。あの漫画をKanさんにめちゃくちゃ薦められてたんですよ。「ぜひ読んでみて欲しい」って。で、先日高熱を出してしまって家で休んでいた時に、デジタルコミックの『おやすみプンプン』を全巻買って一気に読んだら、もうメチャクチャ暗い気持ちになってさらに体調が悪くなったんです。

(一同笑)

Ippei:こんな、何もかも救われない漫画を俺に薦めてくるってKanさんマジでヤベエなって。

Sano:あはははは。

Ippei:想定しうる最悪なシチュエーションに、どんどん進んでいくんですよ。もう地獄でした(笑)。

Sano:なんか映画とか観ていると、「これはやらない」「このルールに沿って進めていきます」みたいな、作り手と受け手の暗黙のルールみたいなものがあるじゃないですか。僕はそれをぶち壊すような作品が好きだし、自分もそうありたいんです。「安心してると痛い目見るぞ」っていうのは、いつも思っていて。映画も音楽も「感動」とか「癒し」「救い」みたいなものをみんな求めたがるじゃないですか。それはそれでもちろんいいんですけど、「それだけじゃないよ」っていう気持ちは常に持っていたいんです。

Ippei:Yusukeさんも、ダークな作品に惹かれる方ですか?

Yusuke:実は僕、映画や漫画ってほとんど観ないんですよ。心が食らってしまうと手の震えが止まらなくなったりして、そのモードを何日も引きずってしまうので。

Sano:ええ? じゃあ、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とか観たらYusukeさん立ち直れないかも。

Yusuke:『アンパンマン』とかなら大丈夫なんだけどね……。

(一同笑)

Sano:でもそしたら、サントラの仕事とかしてるのは大丈夫なの?

Yusuke:制作モードに入ると全然問題ないんだよね。しかも、音楽は暗い方が好きだったりする。

Sano:そうなの? それも意外!(笑)。

Yusuke:暗い音楽であればあるほどポジティブになる(笑)。例えばクリストファー・ウィリッツ。以前、坂本龍一さんとコラボしたこともある人なんですけど、2017年にリリースされた『Horizon』は寝る前によく聴いていました。他にはヨハン・ヨハンソンや、Kanさんから教えてもらったアンディ・ストット。どの作品も暗さの中に「救い」があって。1人でじっくり聴きたい音楽はそんな感じです。

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