クリープハイプ×ヒップホップのコラボは必然だった? 「愛す(チプルソ Remix)」と原曲の変化から考察

クリープハイプ×チプルソコラボの必然性

 そして今回の「愛す (チプルソ Remix)」は、尾崎世界観のボーカルを活かしながらも、原曲のドラマティックなアレンジメントよりも、アコースティックギターと打ち込みのドラムを基調にした、シンプルなトラックに再構築されており、より尾崎の歌声とチプルソのラップを立てる構成となっている。

 そのトラックに擦り合わせるように、チプルソのラップは尾崎の提示したリリックを再解釈し、例えば、 〈黄身〉と〈君〉の掛詞のパートを、〈黄身が揺られてるその間/そろそろそういう頃合いか/こないだの喧嘩もそのまんま/溶かしちゃお黄身の事なんか〉、そして〈心ここに無くて 月は溶けて 空はイエロー〉と、尾崎の歌詞を補遺するような展開になっているのも興味深い。

 しかし、そういった拡大解釈はその部分ぐらいで、ほとんどの部分はラップという情報量の多いアートフォームがリミックスで参加する際に起こりがちな、情報を過剰に上乗せしたり、さらに物語を込めてしまうものではない(物語性を注入したり、情報量を増やすこと自体は否定していないので念のため)。

 それよりも、原曲にある〈肩にかけたカバンのねじれた部分がもどかしい〉以降の、尾崎の具象的な情景描写は「愛す(チプルソ Remix)」ではカットされ、それよりも〈トゥルー次の停車場で/トゥルー最高最高〉のように、より抽象度の高い表現をはめ込んでいることが非常に面白く、より糊代の広い“歌詞的”な表現をラッパー側が提示するという構造になっていることに注目したい。同じようにチプルソのラップも、メロディアスなフロウや声質などを通して“チプルソ性”を表現しつつ、同時にオートチューンをかけることで声自体の人格性は弱まり、抽象度が高く、尾崎の提示した世界を高い次元から、客観的に見ながら解釈しているような構成だと感じさせられた。

 その意味でも、再解釈と距離感という、リミックスにおいて重要な要素をしっかりと込めながら、原曲を更にエモーショナルに構築したチプルソの手腕の確かさと、それを引き出した原曲との幸せな関係性を感じさせる好リミックスだ。

■リリース情報
クリープハイプ - 「愛す (チプルソ Remix)」配信サイト一覧はこちら

クリープハイプ『愛す』
2020年1月22日(水)リリース
初回限定盤 ¥2,300(税抜)
通常盤 ¥1,000(税抜)

<初回プレス分封入先行(初回盤・通常盤共通)>
10周年全国ツアー「僕の喜びの8割以上は僕の悲しみの8割以上は僕の苦しみの8割以上はやっぱりクリープハイプで出来てた」スペシャル チケット最終先行予約抽選シリアルナンバー(応募受付期間:1月21日〜1月26日23時59分)

<CD収録曲>
1. 愛す
2. キケンナアソビ

<初回限定盤DVD「2019年11月16日」収録曲>

けだものだもの
グレーマンのせいにする
ボーイズENDガールズ
クリープ
5%
イノチミジカシコイセヨオトメ
私を束ねて
身も蓋もない水槽
二十九、三十

■ツアー情報
クリープハイプ【10周年全国ツアー「僕の喜びの8割以上は僕の悲しみの8割以上は僕の苦しみの8割以上はやっぱりクリープハイプで出来てた」】
10周年記念ツアー特設ページ

<ツアー日程>
2020年2月7日(金) 札幌 Zepp Sapporo
2020年2月15日(土) 仙台 チームスマイル仙台PIT
2020年2月16日(日) 仙台 チームスマイル仙台PIT
2020年2月27日(木) 広島 CLUB QUATTRO
2020年2月28日(金) 広島 CLUB QUATTRO
2020年3月1日(日) 福岡 Zepp Fukuoka
2020年3月6日(金) 名古屋 Zepp Nagoya
2020年3月7日(土) 名古屋 Zepp Nagoya
2020年3月15日(日) 幕張メッセ国際展示場9-11ホール
2020年3月22日(日) 大阪城ホール

■関連リンク
クリープハイプ公式サイト
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