高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」 第12回
ASIAN KUNG-FU GENERATION、Mr.Children、ポルノグラフィティ……年始に楽しみたい珠玉のライブ映像&音源
待ちに待った年末年始の休暇を楽しんでいる人も多いであろう今日この頃。冬フェスやカウントダウンライブも各地で開催されたが、そういったところに足を運べない人も、お家でライブ鑑賞をしてみてはいかがだろうか? 特に、2019年末には、長く続いているロックバンドの珠玉のライブ映像作品や音源が、数多くリリースされた。
まずは12月4日にリリースされた、ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)の『映像作品集15巻 ~Tour 2019「ホームタウン」』。2019年に、ニューアルバム『ホームタウン』を提げて行ったツアーから、パシフィコ横浜公演の模様が収録されている。私は、11月に行われた、アジカンとELLEGARDENとストレイテナーによる『NANA-IRO ELECTRIC TOUR』で、久しぶりにアジカンのライブを観て、これまでにない心地よさを感じたのだが、今作を観て、その理由を解き明かすことができた。後藤正文(Vo/Gt)の「自分らしく楽しんで」というMCを、自分たちで体現しているような4人のパフォーマンス。本当に音楽が好きで、バンドが好きで、楽器が好きなんだな……と思えるような表情は、オーディエンスにも伝播していて、画面越しにも会場の幸福感が伝わってきた。地元・横浜での凱旋ライブという環境も影響していたのだろう。かつての彼らは、“日本”“ロックバンド”“時代”“ポップソング”など、様々なお題目の中で奮闘しているように見えたこともあった。そのたびに、正装したり、着崩したり、いろいろな楽曲の着こなしを見せてくれたけれど、今は何よりも着心地のよさを重視しているような気がする。その結果、それらすべてを内包するパフォーマンスをできるようになったのではないだろうか。そう思えるほど、自然体で完成度の高いライブだった。ちなみに、私はライブハウスが大好きなので、同世代バンドの中でもいち早く大きな会場に立つようになった彼らに対して、どこか距離を感じていたところもあったのかもしれない。でも、それはもったいなかったな、と今作を観てしみじみと思った。同じような感覚を持っている40歳前後のみなさん、今のアジカンは元ライブキッズにもかなり“響く”音楽をやっていますよ。
距離、というところで言うと、2018年にリリースされたMr.Children(以下、ミスチル)のアルバム『重力と呼吸』は、すごくバンドとの距離が近く感じられる一枚だった。私は「innocent world」がリリースされた頃に高校生だった世代で、ミスチルは自然と聴き続けてきたが、正直バンドより楽曲に興味があったのだと思う。しかし、“25周年を越えてのバンド宣言”とも受け取れる『重力と呼吸』以来、ああミスチルも私の大好きな“バンド”なんだなあと改めて気になってしまい、12月25日にリリースされた映像作品『Mr.Children Dome Tour 2019 ”Against All GRAVITY“』も、どっぷりと観させてもらった。5大ドーム(+沖縄)のファイナル、ナゴヤドームの公演が収録された今作。規模はものすごく大きいのに、やっぱりとても生々しかった。オーディエンスと会話するようなMC、映し出される一粒一粒の汗、出し尽くす意思を感じる演奏と歌、今が楽しいと言わんばかりの笑顔。ミスチルの映像作品らしい繊細でドラマティックなところも生かされて、鮮やかな場面が映し出されている。華々しいキャリアを誇り、4万人のシンガロングを巻き起こしながらも、何より”いち人間“”いちロックバンド“として魅力的な、今のミスチル。メガヒット曲も最近リリースした曲も、すごく4人の今の血が通っていた。長く続けているバンドだからといって、いつ、どんなスイッチが入るかはわからない。そう思わずにはいられない。