King Gnuは、なぜブレイク果たした? 「白日」ヒットからメディア露出までを追う

 そもそも、King Gnuはメディアでの露出の仕方が巧妙かつ策略的であった。テレビ、ラジオ、雑誌、ネットと、メディアごとに目的を変えて、最適化した露出を行っていたように感じるのだ。初めて『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演したとき、井口が一人だけゾンビのような身のこなしで階段を降りていくパフォーマンスを行い、それがSNS上で話題になっていたが、これはテレビというメディアは、自分たちの存在をさらに多くの人に知ってもらうためのものと位置づけていたからなのであろう。

 雑誌やネットメディアに彼らが出る場合は、「メッセージを伝えること」に大胆に舵を切っていることが多い。常田は赤裸々に自分の哲学やビジョンを語り、King Gnuの方向性を提示している。このような場所で、ディープなファンに向けて丁寧にメッセージを届けるからこそ、違和感なくmillennium paradeというプロジェクトも迎えられたのだろうし、まったくやっていることは違うにも関わらず、きちんとファンをスライドさせて魅了させることができたのではないだろうか。また、ラジオの場合は、自分たちのキャラクターを周知しているための場として使っているように感じる。井口のオールナイトニッポン(『オールナイトニッポン0』/ニッポン放送)は、その真骨頂であろう。

 良い楽曲を作り、最適なプロモーションをしながら、適切な変化を遂げていく。そのためにも常に数歩先を見据え、冷静に自分たちの立ち位置を把握して行動してきた。だからこそ、彼らは他のバンドとは明らかに違う速度で、この一年、圧倒的なブレイクを果たしたのだろうし、老若男女に支持され、ついには紅白に出るようなバンドにまで成長したのだろうと思う。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

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