『まだ結婚できない男』主題歌「まだスイミー」、前作からの変化と普遍的な魅力 OP映像に隠された“小ネタ”も

 桑野は“まだ”結婚していなかった。いくつになっても独り身を謳歌し続ける男・桑野信介(阿部寛)の日常を描いたドラマ『結婚できない男』の続編である『まだ結婚できない男』(ともにフジテレビ系)。前作から13年ぶりに復活した本作は、桑野と恋に落ちる“かも”しれない女性陣を刷新し、桑野の現在の生活ぶりが描かれている。また、本作はドラマのタイトルになぞらえて、主題歌もEvery Little Thing「スイミー」から“まだ”の冠をつけた「まだスイミー」(持田香織名義)に。持田香織が優しく歌い上げる。

持田香織「まだスイミー」

 「まだスイミー」は、ドラマオープニングムービーと共に毎週ドラマで流れている。おおよそのメロディや歌詞は変わらず、耳馴染みのある音楽が既視感のある映像とともに流れると、ついついその懐かしさに身を乗り出してしまう。桑野が帰ってきた、自然とそう感じさせるメロディだ。そんな「まだスイミー」だが、実はところどころ今回のドラマに合わせて歌詞が変化した部分がある。Aメロの〈夏の匂い 青む風が ぼくを 通り抜ける〉という部分は、夏クールのドラマだった前回のドラマの季節になぞらえているが、今回は秋クールということもあって〈秋の匂い 屈む風が 僕を 勇気づける〉に変化している。みずみずしい夏の訪れを爽やかに歌った歌詞が一転、秋のぬくもりとわずかな切なさを感じさせるものになった。このように季節に関わる言葉が秋バージョンに入れ替わっている箇所は散見され、作品によりマッチした世界観が表される。さらに、作中で流れる部分以外で言うと、前回〈水の匂い まどろむ君が ぼくを 透かしてみる〉だった箇所が〈樹々の匂い 揺蕩う君に 僕は 寄り添ってみる〉に。13年前の恋愛を経て、皮肉屋の桑野も誰かに“寄り添う”大切さを学んだのかと感じさせる部分だ。本作の歌詞には、13年の歳月で小さいながら変化した桑野の日常と、成長が垣間見える。

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 さらに「まだスイミー」が流れるオープニング映像にも小ネタが隠されている。前回から引き続き、パグを飼っている隣人がいることは本作にとっても桑野のキャラクーを語る上でも重要なポイントだが、そのパグがクルッと振り返る愛らしいシーンがサビ前の一番盛り上がる箇所で使われている。これは前作と共通する演出であり、本作にとって“犬”と関わることが“家族”、“結婚”などに結びつく隠喩的な役割も担っているだろう。桑野の日常を表すシーンの連続では、前回以上に“おひとりさま”を謳歌している様子が映し出される。まさに「結婚できないのではなく、しない」と言う桑野の主張を表すかのごとく、素晴らしく充実している1人での生活が伺えた。趣味のクラシック音楽では、ついにタクトを購入して部屋で振り回している。一方で、「まだスイミー」のアレンジ自体は現代風にまとまっている。前回の印象的なスキャットはマイルドになり、持田の独特の歌い方もどこかシンプルでストレートになっている。その分、ギターやドラムはより複雑で印象的なフレーズを多用するようになった。こうしたアレンジは、まさに今のJ-POPらしい派手な盛り上がりを意識したものだろう。

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