星野源『Same Thing』レビュー 『POP VIRUS』以降のビジョンと新たな刺激を求めて

 もうひとつ指摘しておきたいのは、“コラボレーションを通し、自らの新たな音楽性を模索する”以上に、“コラボ相手の良さを引き出す”ことに重きが置かれている(ように感じる)ことだ。根底にあるのは、“自分が好きな音楽、アーティストをリスナーと共有したい”という願い。そのモードは、10月14日に放送された『おげんさんといっしょ』(NHK総合)にも垣間見られた。今回の『おげんさんといっしょ』では星野とゲストの藤井隆、松重豊が好きな音楽を語り合うパートがたっぷり設けられていた。藤井はDead Or Alive、松重はTom Misch、Louis Coleなどを紹介。さらに星野がNHK教育テレビのドラマ『さわやか3組』オープニング曲を紹介したのだが、このコーナーからは“時代やジャンルに関係なく、素晴らしい音楽を多くの人と共有したい”というメッセージが感じられた。またセッションパートでは、PUNPEEとともにSTUTSの「夜を使いはたして feat. PUNPEE」特別バージョンの演奏も。星野はギターとコーラスを担当し、主役はあくまでもPUNPEEとSTUTSというスタイルをとっていた。「世界で一番カッコいい音をいま出してる自信がある」というコメントも印象的だったが、これはつまり、「自分の存在をアピールするのではなく、“カッコいい音”を聴かせたい」という意思の表れだったのだろう。

 EP『Same Thing』のリリースと前後して、ワールドツアー『星野源 POP VIRUS World Tour』(上海、ニューヨーク、横浜、台北)の発表、ストリーミング解禁、Netflixでツアー映像公開と、世界のマーケットを視野に入れた動きを続けている星野源。『Same Thing』で打ち出した方向性は賛否両論を巻き起こすだろうが、J-POPというフォーマットにこだわり、自身のオリジナリティを追求してきた彼は、2020年以降、日本と海外の垣根を超え、すべてをフラットに捉えたうえで、さらに純度の高い音楽を生み出すことになりそうだ。そのスタンスは、相変わらず内向きな日本の音楽マーケットにも大きな刺激をもたらすことになるだろう。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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