星野源は現代日本ならではのポップスター “POP VIRUS”を最大限に発揮した東京ドーム公演

星野源「POP VIRUS」東京ドームレポ

 星野源が2月2日から3月10日にかけて、5大ドームツアー『星野源 DOME TOUR 2019「POP VIRUS」』を開催した。

 星野源という人は本当にオールラウンダーだと思う。曲も作れるし、歌も上手い。演奏だって素晴らしい。約3時間のライブを通して、バンドのアンサンブルを楽しめる曲もあれば、ギター1本で弾き語る場面もあり、かと思えばダンサーが登場して会場中が踊れる瞬間もある。バンドメンバーとのやり取りは微笑ましく、幕間で流される映像「“一流ミュージシャン”たちからのお祝いのメッセージ」には涙が出るほど笑わせてもらった(ビヨンセはずるいって!)。曲に目を向ければ、先鋭的な楽曲から国民的ヒットソングまであり、朝ドラ主題歌から映画主題歌まで揃いに揃っている。アンコールではすでにおなじみとなったニセ明の登場も含めこれ以上、何を望むのだろう?

写真=西槇太一

 正直なところ、東京ドームという箱は反響音も大きいし、どの席からもステージまで距離があり、個人的にネガティヴな印象を持っていた。しかし、2018年の最後の月に星野源という日本の音楽シーンの第一線で多くのリスナーを魅了するミュージシャンが自分のアルバムに付けた「POP VIRUS」というタイトルのその“両義性”を最大限に発揮するためには、ドームで華々しく開催する以外に選択肢はないだろう。周りを巻き込みながら徐々に人びとを“感染”させていく光景というのは、ドデカい会場でやるからこそ意味がある。

 今回、ライブ本編は大きく分けて三段構成となっていた。開演から「ドラえもん」までの前半部分。それから幕間映像を挟み、セカンドステージでの「ばらばら」から「くせのうた」までが中盤部分。再び幕間映像を挟んで、「化物」から始めて「恋」や「SUN」「アイデア」といったヒットナンバーを経由して「Family Song」へと着地させるラストスパートの終盤部分。特に中盤では『POP VIRUS』ツアーならではの試みが行われ、前半からの流れに変化を与えていた。終盤はヒット曲を畳み掛けることで会場の興奮をこれでもかと押し上げていた。こうして公演の中に起承転結をしっかりと生んだことで、観客を終始飽きさせないライブ作りが行われていた。

 しかし、今回の公演で特筆すべき場面はいきなり冒頭に訪れる。それがイントロダクションとしての「歌を歌うときは」と「Pop Virus」の2曲だ。開演と同時に暗転し、会場中央に彼が登場してひとりで弾き語りし始める。静かに始まる弾き語りから「Pop Virus」のビートとともに、この、なにかがじわじわと侵蝕していくような雰囲気の幕の開け方が後半のカタルシスを生み出す土台のように機能していた。この“感染”していくようなスタートにこそ今回のツアーの真髄があるように思う。

写真=渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

 また、「ばらばら」をサプライズで客席から歌い、次の「KIDS」を演奏するセンターステージまでに空いた移動時間で披露された「STUTS SHOW」(STUTSが星野源の曲のサンプリングのみで構成したDJタイム)では、ミラーボールの反射光が四方八方に散らばり、ドーム会場が瞬時に煌びやかディスコ空間へと変貌した。

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