THE PINBALLS『WIZARD』リベンジ果たした新宿LOFTワンマン 希望に満ちた新しい旅の始まり

THE PINBALLS、ワンマンレポ

 古川貴之(Vo/Gt)の喉の不調を理由に、THE PINBALLSが6月下旬から7月末にかけてライブ活動を休止。これにより、7月12日に新宿LOFTでの開催を予定していた自主企画イベント『WIZARD』も中止となった。古川の回復を待って、8月に入ってからのライブ活動は再開されたものの、実はこの喉の不調はポリープが原因であったことが、古川のTwitterアカウントにて、本人の口から明かされている。

 そんな彼らが自主企画『WIZARD』のリベンジを果たすべく、9月29日に新宿LOFTにて久しぶりのワンマンライブを敢行した。チケットは当然のようにソールドアウトを記録。会場には古川をはじめとするメンバーの勇姿を見守るべく、開演前から熱を持ってバンドの登場を待ち続けていた。

森下拓貴

 会場が暗転し、オープニングSEのThe Sonics「Have Love Will Travel」が大音量で流れ始めると、フロアの熱気は早くも沸点直前まで上昇。悲鳴にも似た声援とハンドクラップが自然発生する中、黒を基調にした衣装に身をまとったメンバーが1人、また1人とステージに登場し、最後に古川が姿を現す。不思議なことだが、ギターを掲げた古川が歪みのかかったコードをワンストローク奏でただけで、「間違いなく今日のライブは最高になる」と早くも確信できた。それくらい、この日鳴らされた音、放たれた歌や言葉はいつも以上に説得力を持つものに感じられたのだ。

 「片目のウィリー」から勢いよくライブをスタートさせたら最後、あとはビートに合わせて気持ちよく歌い踊るだけだ。序盤から畳み掛けるような展開で、曲間もほとんどない状態で「ママに捧ぐ」や「劇場支配人のテーマ」などを次々と繰り出していく。ステージ上の

石原天

古川は喉の不調があったことを感じさせないほどに堂々とした歌を響かせ、石原天(Dr)は力強くビートを刻み続け、森下拓貴(Ba)はコーラスを加えつつ観客を煽りながらフロアの温度を高めていく。そして、中屋智裕(Gt)はギターソロになるとスタンドに乗りモニタースピーカーの上に立ち、エネルギッシュかつエモーショナルなフレーズを奏でる。この鉄壁のアンサンブルは強烈な熱を放っているように見えつつも、実は良い意味で抑制の効いたプレイをしているようにも感じられるのだから不思議だ。

 5曲を矢継ぎ早にプレイし終えると、古川が「ただいま!」と挨拶。すると、フロアからは「おかえり!」の声が返ってくる。このアットホーム感を前に、古川は「歌うのが今、本当に楽しいんです!」と喜びを噛み締めながら語る。森下とのやりとりで時折見せる天然さは、それまでの鬼気迫る演奏からは想像もできないものだが、これもTHE PINBALLSの魅力のひとつ。そういったユルさにホッとしつつも、いざ曲に戻ると再びささくれ立ったギターサウンドがフロア中に響き渡る。

古川貴之

 ミドルテンポの「sugar sweet」で会場の熱量をジワジワ高めていくと、ダンサブルな「Voo Doo」ではフロント3人がモニタースピーカーの上に立ち、フロアを煽りまくる。そのままのノリで続く「FREAKS' SHOW」では、〈ここは最後の桃源郷〉というフレーズが今目の前に広がる新宿LOFTの景色と重なる瞬間も。そこから〈世界の始まりの 間違った高揚感 連れてっておくれ〉と続くこの曲にグッと来たオーディエンスも少なくなかったのではないだろうか(少なくとも、筆者はこの曲でなぜか目頭が熱くなってしまった。そんな経験、初めてのことだ)。

中屋智裕

 二度目のMCでは改めて中止になった7月12日の自主イベントに触れ、古川は「歌えない時間ができたことで、うまくなくても歌うことができるのは、ささやかだけど奇跡だと実感した」と休止期間を振り返る。そんな当たり前のことに気づけた今だからこそ、そのあとで歌われた「ワンダーソング」や「DUSK」といった楽曲が今まで以上に深く、エモーショナルな響き方をしたのは新たな収穫だった。

 

 

 

 

 

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