THE PINBALLS、ライブから伝わる“ロックバンドとしての哲学” 全国ツアー最終公演を振り返る

THE PINBALLSが体現した“バンドの哲学”

 本物のロックってなんだろう。生まれた時からヒップホップやハウスがある世代にとって、それでもロックンロールに発見されてしまった少年たちが、それ以外、なんの武器も持てずに鳴らすもの、少なくとも2010年代以降のロックはそうした必然がある気がする。

 結成12年目にして、昨年末にメジャーデビューしたTHE PINBALLS。今回、メジャー1stシングル『Primal Three』を提げた全国ツアー『-Leep with Lightning your-』の後半戦「〜Final Series〜」のファイナルである渋谷TSUTAYA O-WESTを見たのだが、いわゆる下積みや不遇の時代を感じさせず、ただ今日を生き、今を鳴らす喜びや、バンド活動以外に興味がなさそうな佇まいに圧倒された。いや、むしろこんなに楽しげに演奏されたら、やっぱりシンプルな4ピースのロックンロールは不滅だな、バンドって存在自体が奇跡だなと素直に思わされた。

 これまでで最も大きなキャパシティとなるO-WESTは、ライブ2日前にソールドアウト。喜びを爆発させ、前のめり気味でステージに登場した4人は痛快に疾走する「片目のウィリー」でライブをスタート。強力なエイトビーター石原天(Dr)のシンプルなビートをここまでイメージ豊かに届けられるのは、古川貴之(Vo)の歌の力が大きいように感じる。古川は言いたいことやメッセージではなく、物語で聴き手を自由に旅をさせる表現者であることは筆者のようなTHE PINBALLS初心者でも理解できる。バンドアンサンブルあっての物語の疾駆ではあるけれど、ボーカルが何を歌うのかは、プレーヤーの演奏に凄まじく影響する。彼らはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITY、またThe WhoやThe Rolling Stonesからの影響を公言している。今回、その本質を見た思いがした。短めの尺に個別の物語を凝縮した楽曲ではハードボイルドな世界に浸っていた古川だが、MCで見せる対極的な笑顔からは人の良さが溢れ出ており、そのギャップもいい。

 爽やかさと切なさを併せ持つ「20世紀のメロディ」もあれば、AORフレーバーなバックビートの「299792458」もある。森下拓貴(Ba)のダウンピッキングが曲の重さを際立たせる「カルタゴ滅ぶべし」。その間奏で聴ける中屋智裕(Gt)のホワイトブルースに根ざしたフレーズ、素の歪み。人間の感情がダイレクトにプレイに直結し、ただアンプリファイされているだけというシンプルさ。4人の肉声を聴くようなアンサンブル、それがいわば「本物のロック」という手垢のついた表現を否応無く導き出してしまうのかもしれない。もちろんポジティブな意味で、だ。

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