デビュー1年で豪ソングスチャート制したTones And I、「Dance Monkey」で世界の心掴むか
ところで、Tones And Iの右手のタトゥーをフェスの映像で確認出来るのですが、見覚えはありませんか。実は「Dance Monkey」のMVで弾けているあの老人の右手にも同様のタトゥーがあるのです。果たしてTones And I本人が老人を演じたのかは明かされていないようですが、仮に彼女だとしたら話題作りに長けていると言えます。実際、6月の楽曲リリース、7月のフェス出演を経た直後から「Dance Monkey」はオーストラリアソングスチャートを制覇し、現在まで8週連続で首位を獲得しているのです。国外の歌手が首位に立つことの多いオーストラリアソングスチャートで地元出身者が制したのはディーン・ルイス「Be Alright」以来およそ1年ぶり。また先月末には「Dance Monkey」も収録したデビューEP『The Kids Are Coming』をリリースし、こちらも地元アルバムチャートで最高3位を獲得しています。アメリカのビルボードソングスチャートではリミックス等を追加投入して首位獲得に至るケースが多く、チャート制覇のためにはそのような”仕掛け”が欠かせなくなってきましたが、MVの面白さで興味を惹かせるのはある種の仕掛けと言えるかもしれません。そして興味を持った方がフェスのパフォーマンスをチェックすれば、2万もの観客同様、Tones And Iに魅了されるという流れが生まれています。
Tones And I「Dance Monkey」はオーストラリアでは勿論のこと、ヨーロッパ各国でもチャートを席巻中。アメリカや日本ではビルボードソングスチャートでまだ結果を残していないものの、Spotifyデイリーチャートでは現段階でアメリカ39位、日本が82位を記録しヒットの兆し。また日本ではレコード会社のサイトにTones And Iのページが用意されお膳立ては充分。アーティスト写真はファッションや色合いから、どことなくビリー・アイリッシュを思わせます(参照:Tones And I アーティストページ)。
日本でTones And Iが紹介される際、第2のビリー・アイリッシュ、路上パフォーマンスの歌姫などのキャッチコピーが用いられるかもしれませんが、まずはTones And Iの名を認知させていけば、気になった人が彼女の声やMVに触れた瞬間、惹き込まれることは間違いないでしょう。プロモーション来日の機会があるならば、バスキングを仕掛けてみるのも面白いかもしれません。
さて、Tones And Iは今月25日に新たなMVを公開。デビューEPの表題曲、「The Kids Are Coming」は世界の諸問題を作り上げてきた大人への怒りを示しています。
MV公開の数日前、国連気候行動サミットで地球温暖化防止に真摯に取り組もうとしない各国代表を厳しく非難したスウェーデンの環境活動家、16歳のグレタ・トゥンベリさんを思い浮かべた方は自分だけではないでしょう。地球温暖化や銃社会などの問題を挙げ、〈IF NOT NOW, THEN WHEN?(今じゃなければいつやるのか?)〉と問うMVは、そのタイミングも相俟って評判を呼びそうです。
■Kei
チャート愛好家。青森県弘前市のFMアップルウェーブ『わがままWAVE It's Cool!』(毎週日曜17時)スタッフのひとり(DJネームはブレストコナカ)。音楽/ラジオに関するブログ【face it】を日々更新中