0.1gの誤算がZepp DiverCityで繰り広げた、圧巻のパフォーマンス 緑川裕宇バースデーライブレポ

0.1gの誤算が繰り広げた圧巻のパフォーマンス

 また、前述の「やりたいことをやりたい放題やる」についてだが、それは「本編4曲」といった構成だけでなく、演奏面でも用意されていた。哀愁漂う「196番地の女」ではキーボードを、眞崎の躍動的なスラップベースが耳を引く「VITAL」ではギターを弾いていた緑川だが、インスト曲「希少種達の運命」を披露する直前、ステージにドラムセットが運び込まれる。そして「音楽をやるために生まれてきた男、緑川裕宇の力をとことん見せつけてやろうと思います!」と、神崎とツインドラムを披露。そのまま2人でドラムバトルに突入したのだが、これが一夜漬けレベルではない見事な腕前! バンドのフロントマンであり、メインコンポーザーでもある彼だが、そのマルチプレーヤーぶりでもオーディエンスを大いに沸かせていた。

 他にも、「絶対プリティ生命体ー緑川のテーマー」ではダンサーを引き連れて披露したり、「必殺!からくり七変化!」では、緑川が「これはライブじゃねえ、体育の時間だ!」とオーディエンスに様々な指示を出したり、「2008年高田馬場AREA」「フルニトラゼパム」「混沌的極悪暴曲-ヴィジュアロックパロディウス-」と、彼らの中でもとりわけハードな楽曲を3連発で叩きつけたりと、書き出せばきりがないほど、あの手この手でフロアを煽り続けていた5人。それが彼らの魅力でもあるし、そこが一番印象に残るのだが、瑞々しいバンドサウンドを走らせた「君色トワイライト」や、美しいアンサンブルを繰り広げた「この声が届くまで…」、そして「俺らはみんなの背中を押すためにバンドやってるから、背中押されに来いよ!」と、胸に秘めた思いを一音一音に込めた「アストライアの転生」など、ただ盛り上げるだけでなく、曲に込めたメッセージや流麗なメロディを、オーディエンスにしっかりと届けていたことも記しておきたい。なかでも、“53番目の新曲”として披露された「ライラックアイロニー」は、“53=誤算”というバンド名と語呂が同じなこともあり、かなり試行錯誤しながら制作したそうで、感傷が迸るバンドサウンドに乗せられた、彼ららしい耳馴染みがいいメロディを存分に堪能できる佳曲。趣向を凝らした企画やライブの爆発力だけでなく、楽曲の力でも聴き手に訴えかけられるところは、ここから彼らが飛躍していく上でも重要なものになっていくだろう。

 本編4曲、アンコール11曲、ダブルアンコール10曲という特殊な形のライブを終えた彼らは、この日、来年の4周年記念ライブへ向けた今後の活動を一挙にアナウンスした。まずは10月から全国無料ワンマンツアー『【有害集団】無料・いちご増殖化計画【豊洲PiTヲ襲撃】』を、12月には全国5カ所を廻る『クリスマスワンマンツアー【プレゼント】ゴサンタ、現る【争奪戦】』を開催し、年が明けた2020年1月から『【豊洲PiT】『七天を巡る王』【攻略祈願】』を行なうことを発表。そして、2020年3月28日、『4th Anniversary ONEMAN「挑戦は終わらない、俺達が俺達であるために」』を、豊洲PITにて開催する。“日本で一番デカいライブハウス”に挑むために、「まだまだ休むことなく日本全国廻って、いい曲をたくさん出していく」と話していた緑川。彼らがここからさらに多くの人を巻き込んでいくであろうことを感じた一夜だった。

■山口哲生
ライター/編集。音楽雑誌編集を経てフリーランスに。邦楽をメインに、雑誌・WEB・ファンクラブ会報などで幅広く執筆中。1981年生まれ。愛知県出身。新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手と地元が一緒。嬉しい。

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