湯木慧、ワンマンライブ『繋がりの心実』を通して伝えた“歌の世界”を他者と共有するということ

湯木慧ワンマンライブ『繋がりの心実』レポ

 中盤の「記憶」、「74億の世界」、「追憶」は弾き語りで披露された。とくに「74億の世界」ではあえて会場の明かりをすべて落とし、真っ暗闇の中でその歌を聴かせた。よるべのない暗闇の中では歌だけが頼りで、一段と強度が上がった言葉に想像力が刺激される。五感が研ぎ澄まされていくこの感覚は、なかなか得難いものだろう。再びバンドが登場しての終盤は、「極彩」、「金魚」、「産声」とメジャーでのシングル曲を中心に構成し、エレクトロ+人力バンドによる詩情豊かかつクリエイティブなアレンジで歌い上げた。「人が生まれてへその緒が切れることで“個”となるけれど、きっと人と人はへその緒のようにつながっているんじゃないかと思っている」と、MCをした湯木。だからこそ誰かを傷つければ、心が痛むし、相手のことを大事に思えば、自分も大事に思ってもらえるという、目には見えないこの世界の繋がりについて語る。この『繋がりの心実』は、そのことを様々な感覚を通して伝えるインスタレーション的なライブだ。「このワンマンでは、ここにいるすべての人を愛したいと思ってパフォーマンスしてきました。今日は愛を届けにきました」。そういって、本編のラストに温かく鮮烈な「産声」の叫びを上げた。

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 アンコールのときに、「今言うなという感じですけど、ライブがすごく苦手だったんです」と話した湯木。それを和らげてくれたのがこのバンドメンバーであり、この日を実現するために動いてくれたたくさんのスタッフだといい、じつはリハのときに嬉しくて泣いてしまったのだという。活動をしていて悩むこともあるけれど、見にきてくれる人や関わってくれる人たちが、真っ暗闇でも道しるべになってくれると、静かに熱く語りかけてアンコールのラストに「一期一会」を贈った湯木慧。一対一の歌の世界をより濃く、そしてその景色を広げ他者と共有していく“ライブ”として、湯木慧はとてもいい空間を作り上げていっていると感じた一夜となった。

(文=吉羽さおり/ライブ写真=小嶋文子)

■セットリスト
湯木慧ワンマンライブ『繋がりの心実』セットリスト
内容:2019年8月18日の大阪 Shangri-La公演、24日の東京キネマ倶楽部公演のセットリストをほぼ再現したプレイリスト

湯木慧 オフィシャルサイト

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