湯木慧、ワンマンライブ『繋がりの心実』を通して伝えた“歌の世界”を他者と共有するということ
8月にメジャー2ndシングル『一匹狼』をリリースしたシンガーソングライター、湯木慧のワンマンライブ『繋がりの心実』が東京キネマ倶楽部で開催された。
昨年3月のワンマンライブ『水中花』で初のバンドセットでのライブを行なったが、今回はそれ以来となる、ドラム、ベース/ウッドベース、ギター/キーボード、パーカッション、そして湯木慧による5人編成でのライブだ。空間の装飾や演出も自身で行なう湯木だが、今回のステージには様々に彩られたたくさんのトルソーが並び、ステージ中央には木漏れ日が射したようにフリンジで囲われた円形のステージを設えた。
蝉しぐれが鳴り響き、ぼんやりと暗いステージはひっそりとした森のようで、2ndシングルの表題曲「一匹狼」のMVを思い起こさせる。湯木は、その円形のステージに登場すると、すっと息を吸い込んで「一匹狼」からライブをスタートした。〈今、立ち上がるための“音楽”持ってさ 僕はただ唄う〉と自身に囁き言い聞かせるようにアコギを弾き語り、そしてバンドサウンドと交じり合いながら歌の鼓動を大きくし、観客を惹きつけていく。
湯木の頭の中の音の世界を抽出しようという繊細さと大胆さを持ったバンドや、同期とのアンサンブルがとてもいい。「人間様」、「アルストロメリア」、「万華鏡」と細やかに多彩な色を重ねていくサウンドで、前半からしっかりと会場を掌握している。観客は、湯木が生み出す音の万華鏡の中に閉じ込められて、ゆらりゆらりとその歌心に揺れ、また心の柔らかな部分をつく言葉がチクリと胸を刺す。かと思うと、「魔法の言葉」では一転、湯木は元気いっぱいでコール&レスポンスをレクチャーし、バンドメンバーも遊び心が入った悪ノリをしながら会場を笑顔で満たすなど、ライブだからこそのフレンドリーな一体感も生む。バンドセットは2度目だが、ひとつのチームとして良好なセッションを重ねてきたことがわかる。