テミン(SHINee)の歌声そのものが踊っているーー『FAMOUS』に感じた進化と底知れぬ魅力
有名、著名、名高い……の意味を持つ“Famous”。SHINeeとして韓国でデビューしたのが2008年のこと。メンバーからもファンからも末っ子として可愛がられ、その愛情を一心に受けてすくすくと育ったテミン。そして、天使のような無邪気さと、ずば抜けたダンスのセンスで知られる存在になった。愛されキャラで、天真爛漫で、天才的。それが“Famous”なテミンだ。
ソロで発表された楽曲も、持ち前の中性的な雰囲気を活かした妖艶な振付の楽曲や、踊ることが好きでたまらないという野性的な才能がほとばしるダンサブルな楽曲が目立った。いわば私たちが知るテミンの魅力を濃縮したような、「これぞテミン」と膝を打ちたくなるような作品たち。だが、本作では、その“Famous”なテミンでは終わらない、何かがあるのだ。リード曲「Famous」を聴きながら、始めのうちはいつものようにまぶたの裏で踊るテミンを脳内再生していた。そう、テミンの楽曲はいつだってダンスと歌がセットだった。楽曲を聞けば、いつも無意識的に“早くパフォーマンスが見たい“と思っていた。
しかし、この作品では歌声そのものがすでに踊っているのだ。テミンの歌声が著しく進化している。それこそが、本作で出会った新たな気づき。そう悟った瞬間、メデューサと目が合い石にされるかのように、心がガシッと掴まれる感覚に陥る。そして“Famous”になったテミンの、まだまだ底知れぬ魅力があることに少し恐ろしさを感じながらも、覗き込まずにはいられない気分にもなる。
2曲目の「Slave」では、〈ご褒美のキスして 指先で〉とセクシーな歌詞を吐息混じりのウィスパーボイスで歌い上げる。まるでその歌声が聴く者の肌を撫でるようで、思わずゾクゾクしてしまうほど。〈まだ君の気づいていない いいところ 教えてあげるから〉と低く響く歌声は大人の男の色気が匂い立ち、そこから〈いこう そう何度も 夜は長いから〉と一気にファルセットを用いて情緒たっぷりに歌い上げる。これまでダンスで魅せてきたものを、歌声の抑揚で表現しているようだ。