chelmicoが語る、“好み”を追求した音楽作り「自分たちのスタイルが確立してきた」

chelmicoが追求する“好みの音楽”

 昨年夏に出したメジャーデビューアルバム『POWER』から1年。「爽健美茶」などのCMソングで大きくブレイクしたchelmicoがニューアルバム『Fishing』を完成させた。先行シングルの「爽健美茶のラップ」や「switch」、さらには小袋成彬プロデュース曲や、彼女たちが愛してやまないRIP SLYMEの名曲のリリックを引用した曲など、本作は聴きどころが満載。

Sokenbicha No Rap

 全体的にサウンドは奥行きのあるソフトな音像へと洗練され、メロディ/歌にも積極的にアプローチ。楽曲作りでも新しい手法を試みるなど、大きな成長と進化を確認できる一枚となっている。二人はどんな自分たちを見せたくて、今回のアルバムを作ったのか。ここにはまだあなたが気付いていないchelmicoの魅力がたくさん詰まっている。(猪又孝)

音楽を作ることが本当に生活の一部になった

ーー1年ぶりのアルバムですが、今回はどんな作品をめざしたんですか?

Mamiko:前回の『POWER』はライブ映えをする曲が欲しかったから、普段の自分たちより強めの曲を多めに作ったアルバムだったんです。けど、今回は成長しているところを見せたかったので大人の一面というか。イヤフォンでじっくり聞かせるような曲を作ろうというところから始まりました。

ーーなるほど。

Mamiko:というのも、「爽健美茶のラップ」や「switch」を入れることをもともと決めていたので、それらの曲とのバランスを取りたかったし。あと、私たちは静かな音楽も好きだから、そういうところでも幅を見せたいなと。

ーー前作から今作までの間に、「爽健美茶」のCMソングを手掛けたり、前作収録の「Player」がCMソングに起用されるなど、大型のタイアップが増えました。自分たちを取り巻く状況にどんな変化がありますか?

Rachel:飲む居酒屋が少し暗がりになりました。前までは明るい酒場だったけど(笑)。

ーー顔バレを避けるため?(笑)。

Rachel:単純に大人になったんでしょうね。落ち着いたところでゆっくり過ごしたい、みたいな。

Mamiko:でも、2月に「爽健美茶」のCMが放送されてから、chelmicoのことを知ってくれる人が増えていることを実感しました。ヒップホップを聴かない人から声を掛けられたり、そういう人がライブに来てくれることが多くなったり。

Rachel:女の子のファンが増えたね。子どものファンとか。

Mamiko:幼児とか小学生くらいのファンをゲットできた。そういういろんなことをじわじわと実感できて、すごく嬉しいですね。それこそ、今、夏フェスとかに誰もウチらのことを知らない状態で出ても「爽健美茶のラップ」を歌ったら「あ!」ってなってくれるから。

chelmico「Player」

ーー「Player」もライブでやるんですか?

Mamiko:やります。だいたい1曲目にやるんですけど、そのときも「あれ? 聞いたことあるぞ」みたいな反応が返ってくるから。

ーー自分たちの認知度が上がったことで、楽曲作りに対する意識や姿勢に変化は生まれましたか?

Mamiko:そのことで自信がつきました。今までは「ラッパーだぞ、ナメんな」みたいな気持ちが強かったんです。

Rachel:頑張ってそうしてた。

Mamiko:けど、「爽健美茶」で、もうみんなが認めてくれてる状態になったなって思うようになったんです。ラッパーであることに自信がついたので、今回はラッパーだということに囚われずに、歌も歌うし、歌詞も今まで以上に正直に書いてるものが二人ともすごく多い。そこは変化したなって思います。

ーーRachelさんは今回のリリースに対して「前までは音楽に対してちょっとそわそわしたり、気を遣っていた」というコメントを寄せています。その胸の内をもうちょっと詳しく教えてください。

Rachel:本当に付き合いたてのカップルと同じ感覚というか。何が言いたいのか自分でもわからないとか、この音楽に対してどういうアプローチをしていったらいいのかっていう言語がなかったんです。けど、最近ようやく慣れてきて。

ーー以前は自信がなかった?

Rachel:自信がないし、楽しくは作っていたけど「大丈夫かな、これで」とか、「もっとこういうハモを入れたら良かったな」とか、そう思っても口に出せなかったり、上手く説明できなかったんです。でも、最近は「もっとボリューム上げて」とか、そういうディレクションができるようになってきた。音楽との付き合い方がわかってきた。今回はすごく引き出しが増えたなって自分でも思います。音楽を作ることが本当に生活の一部になったなっていう感覚。

ーー隣で見ていて、そういう変化を感じますか?

Mamiko:感じます。あと、今回は話し合いが今まで以上に多かったんです。ウチらの話し合いも多かったし、トラックメイカーとも話すことが多かった。だから周りからは面倒臭い存在になっていってると思います(笑)。トラックメイカーに意見を言うことが増えたし、自分たちのこだわりを強く出すようになったから。

ーー音楽との付き合い方がより深くなってきた。

Mamiko:そう。歌詞も基本的に、お互い最高! っていう感じですけど、でも「ここをこういうふうにやった方がもっといいかもね」とか言うようになったし。レコーディングのときも「ここはこういうフロウの方がいいと思う」とか「もうちょっとだけテンション高め」とか「ちょっと声を高くした方がいい」とか細かく言うようになって。それによってchelmicoの強度がより増したような気がします。

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