「Perfect 6th Sense」インタビュー
韓国R&Bシンガーソングライター Eyediが語る、アイデンティティへの強いこだわり
韓国の人気オーディション番組『MIX NINE』で彼女を知ったという人も多いのではないだろうか。同番組出演の際は本名のナム・ユジン名義だったが、実はEyedi(アイディ)として活動するシンガーソングライターだ。昨年8月デジタルシングル「Sign(Japanese Ver.)(Feat.Jinmenusagi)」で日本デビュー、今年8月9日には初の日本オリジナル楽曲「Perfect 6th Sense」を配信リリースした。
“アイデンティティ”と“EYE(目)”を合体させた名前を持つEyediは、その名の通り、自身のアイデンティティに強いこだわりを持っている。インタビューをしていても、彼女の中に自分がやりたいこと、できること、そのために何をすべきか、すべてが明確になっていることがひしひしと感じられた。やわらかく、おだやかな彼女の内で育まれているEyediならではの個性と音楽への情熱、そしてこれからの夢を語ってもらった。(尹秀姫)
Eyedi=個性のハッキリしたアーティストの視線
ーー日本でもEyediさんのことを『MIX NINE』(有名プロデューサーが韓国中の音楽会社を訪れ、次なるKPOPスターを見つけていくサバイバルリアリティショー)で知った方は多いのではないかと思います。
Eyedi:たくさんの方に私の存在を知ってもらうきっかけになった番組でした。TOP5には残ったのですが、最終的に優勝はできなかったんです。それでも、番組が終わった後、ガールズグループでのデビューのお話をいただいたり、私という歌手を知ってもらえるいい機会になったと思います。そして何よりこの番組を通じていろんな経験ができたことが、私にとっては一番の財産ですね。私はソロシンガーなので、他の人とステージに立ったり、練習したり、合宿所で一緒に生活したことがほとんどなかったんです。だからこそ、この経験がとても貴重で、これからもずっと心に残ると思います。番組で知り合った仲間とは、今でも連絡を取り合っています。みんな実力もあって、努力家で、いい人ばかりなんです。いい友人を得られたのも、『MIX NINE』のおかげですね。
ーー『MIX NINE』出演後、グループで活動したほうがいいのでは、という迷いが生まれたことは?
Eyedi:それはまた別のことだと思ってましたから。『MIX NINE』では当時一緒にチームを組んでいたみんなといいステージを作りたいという気持ちが強かったですが、終わってからは、Eyediとしての個性をもっと見せたいという思いが強くなりましたね。
ーーEyediさんが歌手になりたいと思いはじめたのはいつ頃なのでしょうか。
Eyedi:実は高校2年生の頃まで、ファッションデザイナーになりたいと思っていたんですよ。でもサークルに入らなくちゃいけなくなって、友だちと一緒に音楽サークルに入ったんです。そのサークルの行事で初めてステージに立って歌を歌った時、たくさんの方から大きな歓声と拍手をもらったことが、私の人生を変えました。それから音楽の道に進むことを決めて、音楽塾に通って、オーディションを受けて、合格して、事務所に入って練習生になって……デビュー組になるまで3~4年くらいかかりました。練習生時代、18歳くらいから曲作りも始めるようになって、私が作った曲をみなさんに聴いていただけるようになったのは、デビューアルバムの『Tomorrowland』(2017年)からです。
ーーEyediという名前には、どういう意味が込められていますか?
Eyedi:Eyediは“アイデンティティ”と目を表す“EYE”を合わせた造語で、「個性のハッキリしたアーティストの視線」という意味を持っています。“私がやりたいこと、私の表現したいことをやる”という願いを込めた名前なんですが、実はこの名前にはエピソードがあります。以前、私が練習生としてデビューを控えていた頃、これは本当に私がやりたかった音楽なのかと悩んでいたことがあったんです。それで当時、その会社の代表兼プロデューサーに「これでは私は芸能人になるためにやっているのか、音楽がやりたくてやっているのかわかりません」と言って、デビューを捨てて会社を辞めてしまったんです。その時、そのプロデューサーが「お前は本当にアイデンティティがハッキリしている」と言って、私のことをずっと覚えていてくださったんですね。それからどういうわけか、そのプロデューサーとまた別の会社で出会って、Eyediという名前でデビューすることになりました。
ーーそんな運命的な巡り合わせもあって、韓国では2016年にデビュー。日本では昨年、デビュー曲「Sign(Japanese Ver.)(Feat.Jinmenusagi)」を含めた8曲入りミニアルバムをリリースしました。この8曲はこれまで韓国で発表してきた曲の中から選りすぐりの楽曲が収録されていますが、このアルバムの中から1曲おすすめするなら?
Eyedi:どれも大切な曲ですが、あえて1曲を選ぶなら「Luv Highway」ですね。「Luv Highway」は私がレトロな音楽性により深く入り込むきっかけになった曲なんです。それに一番、聴きやすい曲でもあると思います。
ーー今お話にあったように、Eyediさんは韓国ではレトロR&Bという新しいジャンルを確立した音楽活動をしていますが、日本では今回、夏にピッタリのパーティーチューン「Perfect 6th Sense」が配信リリースされましたね。
Eyedi:EDMをベースにしたダンスチューンで、今まで私が歌ってきた曲とはまったく違う曲調に挑戦しました。なので、ファンの方はすごく驚いていましたね(笑)。その分、新鮮さを感じていただけると思いますし、これからも新しいことに果敢に挑んでいきたいです。でも、最初はとても心配だったんですよ。今まで歌ったことのないジャンルだったので、おかしいところはないか、レコーディング中もすごく気をつかいました。
ーー日本語のレコーディングはどうでしたか?
Eyedi:日本語でのレコーディングは2度目だったので、日本語の発音は前よりは多少慣れたと思います。でも今回の曲はラップのように歌のテンポも早く、とにかく言葉数が多いんです。今まで歌っていた曲との違いになかなか慣れなかったのが大変でしたね。
ーー日本語の発音がとても自然だったので驚きました!
Eyedi:レコーディングの時にも褒められたんですが、私は「本当にそうなのかな? おだてられてるだけかな?」って勘ぐってました(笑)。
ーーちなみに、曲名にある「6th Sense」といえば第六感のことを指しますが、Eyediさんに第六感は……?
Eyedi:第六感とはちょっと違うんですけど……私は考え事をしている時、考えに集中しすぎて周囲のことがまったく気にならなくなって、周囲からはただ一点をぼんやり眺めているみたいに見えるんですね。そんな私の様子を見て、スタッフさんたちはいつも「幽霊でも見たの?」と言います(笑)。『MIX NINE』に出ていた時も、たとえばみんなが右を見ているのに、私ひとり左を見ている時があったりして、あとで放送を見て自分でも驚いたことがありました。でも、芸術的なお仕事をする方の中には霊感があるという人も多いと聞きます。私はまったくないんですけどね(笑)。
ーーEyediさんはシンガーソングライターとして楽曲制作やプロデュースも行うなどマルチな展開を見せていますが、音楽活動で意識していることは?
Eyedi:私が一番やりたいこと、一番聴かせたい音楽を自分で作ってみんなに聴かせたい、という思いが今とても強くあります。まわりでサポートしてくれるスタッフは私に「こういうのはどう?」と提案することはあっても、決めつけることは絶対にないんです。これってすごく難しいことなんですよ。私自身、一時期は檻に閉じ込められているような窮屈さを感じる時もあったのですが、今は本当にやりたいことをやらせていただいてます。あと、私が曲を作る中で一番大事にしているのはコンセプト。まず色から思いつくことが多いですね。たとえばグレーから「さびしい・ひとりぼっち・都会的」といったイメージが湧いたら、次はその浮かんだイメージに合う映画を観たり、本を読んだりして、曲作りの一助にします。ちなみに、先ほど挙げた「Luv Highway」も『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』という映画を観て作った曲です。
ーーEyediさんが自ら考える“Eyediの人気の秘密”はどんなところにあると思いますか?
Eyedi:ファンのみなさんからは「歌声が好き」だとよく言っていただきます。韓国ではASMRが流行っているのですが、私の声はまさにそのASMRみたいなんだそうですよ(笑)。日本では8月14日からMnetで『作業室』(10人の男女ミュージシャンたちによる青春リアルロマンスバラエティ。Eyediも出演)の放送がはじまりますが、この番組を観ていただければ、今私の言っていることを理解していただけるんじゃないかと思います。