Creepy Nuts、オードリーへのアンサーが形に 最高にトゥースな「よふかしのうた」MV分析

 2018年6月の青森公演を皮切りに、9月の愛知、12月の福岡、そして2019年3月2日の日本武道館でファイナルを迎えた10周年全国ツアー。終演後から燃え尽き症候群になっていた若林にとって、6月30日にラゾーナ川崎プラザ ルーファ広場にて開催された武道館公演のDVD発売記念イベントは、ツアーに区切りを付ける意味合いもあった。ティーンリトルトゥースこと貴重な女子高生リスナーに春日へのキャップかけを行い、締めは「トゥース」の3本締め。イベントの終了と同時に降り出した雨に若林が「頭を冷やせって、親父が言ってるのかな」と天を指差すと、会場のリトルトゥースは歓声を上げた。若林の父親は2016年、1年半に渡る闘病生活の末、お隠れになっている。若林は『ANN』の中で何度も、何度も父親の死に触れ、それを笑いへと昇華してきた。ラゾーナ川崎に集まった1万人が、お隠れになった若林の父親で笑っている姿は、通りがかりの人から見れば異様な光景なのかもしれないが、それがオードリーとリトルトゥースの間での愛ある内輪ウケなのだ。

 改めて、「よふかしのうた」は武道館公演を観たCreepy Nutsが、オードリーに向けた“本気の内輪ウケ”というアンサーだ。けれど、一つだけ『ANN』にとどまらない、ポピュラーなネタが混ざっている。それがラスト、テレビに映る『M-1グランプリ2008』(朝日放送テレビ・テレビ朝日系)の映像。敗者復活から勝ち上がってきたオードリーが、準決勝でナイツ、NON STYLEを下し、1位に躍り出たまだ若き春日と若林の姿だ。「1万人が10年続けば大したもんだぞ」ーーこれは10年前、ラゾーナ川崎でイベントを行ったオードリーに事務所の社長が言った一言。その言葉通りに、オードリーは“大したもん”を成し遂げた。M-1、武道館からの、次の10年20年。語らずとも多くのメッセージを放つ「よふかしのうた」のMVは、粋で“最高にトゥース”なMVだと思う。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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