HER NAME IN BLOODは現在進行形で進化を続ける 10年の歩みと今が詰まったベスト盤を聴く

HER NAME IN BLOOD『Bloodline』評

 このベストアルバムに収められている楽曲はすべて、メジャーデビュー作『BEAST MODE』以降の音源で固められている。ということは、『DECADENCE』から『HER NAME IN BLOOD』までのインディーズ時代の楽曲は含まれていないのか? と不安になるが、そんな心配は無用だ。『Evolution From Apes』で再録された「GASOLINES」「REVOLVER」「HALO」に加え、今回このベスト盤用に「We Refuse」「Decadence」「Unshaken Fire」も新たに再レコーディングされているのだから。初期の荒々しさや前のめりな勢いとは異なる、今のHNIBだからこその重量級サウンド&アレンジで表現された初期の楽曲群は最新オリジナルアルバム『POWER』の楽曲と並べて聴くことで、バンドの変わらぬ軸足と新たに得た武器を再確認できるはずだ。

 また、再録3曲のほかにも本作のために制作された新曲「Darkside」と、バンド名のルーツとなるStrung Outのカバー「Her Name In Blood」も収録されている。「Darkside」は今のHNIBだからこそ表現できる、地を這うようなヘヴィさとキャッチーなメロディが融合した意欲作で、“『POWER』のその先”をほんの少しだけ垣間見ることができる。そして「Her Name In Blood」を聴くと、HNIBはヘヴィメタルやメタルコアのみならず、パンクやハードコアからも多大な影響を受けていることが理解できる。そういった雑多な要素が血となり肉となり、今の HNIBを作り上げた……HNIB流に味付けられた「Her Name In Blood」はバンドの原点と今を結ぶ、非常に重要な1曲と言えるのではないだろうか。

 バンドのキャリアこそ10年を超えるHNIBだが、ベストアルバム『Bloodline』からはそういった“中堅バンドの貫禄”よりも“常に今を生きる躍動感”が強く伝わってくる。バンドとしてさらに前進していくためのマイルストーンであるこの『Bloodline』を経て、HNIBはここからどんな進化を遂げるのだろう。どんどん鍛えげられていくIKEPYの肉体とあわせて、その動向から目を離さないでおいてほしい。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

Bloodline
■リリース情報
『Bloodline』
発売:2019年6月26日(水)
価格:¥2,500(税抜)
配信はこちら
M-1 We Refuse
M-2 LET IT DIE
M-3 Darkside
M-4 POWER
M-5 ラスト・デイ
M-6 GASOLINES
M-7 KATANA
M-8 Redemption
M-9 Decadence
M-10 REVOLVER
M-11 SAVIOR
M-12 BAKEMONO
M-13 Her Name In Blood
M-14 HALO
M-15 From The Ashes
M-16 Unshaken Fire

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