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HER NAME IN BLOODは現在進行形で進化を続ける 10年の歩みと今が詰まったベスト盤を聴く

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 HER NAME IN BLOOD(以下、HNIB)がキャリア初となるベストアルバム『Bloodline』を6月26日にリリースした。2010年3月に初のフルアルバム『DECADENCE』をリリースしてから今年で10年目に突入したこのタイミングに、改めてHNIBというバンドがどういう個性の持ち主なのかを知る上でも、そして現在進行形で進化を続けているバンドの“今”を切り取るという点においてもこのベストアルバムは非常に大きな役割を果たす1枚になることだろう。

 大きな節目を迎えようとするこのタイミングに、改めてHNIBというバンドの軌跡を振り返ってみたい(以下、文中に登場するメンバーの発言は昨年4月、アルバム『POWER』リリース時に筆者が行ったインタビューからの引用/HER NAME IN BLOODが語る、バンドの進化と新たな挑戦「シンプルな楽曲は強い武器になる」)。

 アメリカのパンクバンドStrung Outの楽曲「Her Name In Blood」(2004年のアルバム『Exile In Oblivion』収録)がバンド名の由来となったHNIBは2007年に東京都内で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2017年にはIKEPY(Vo)、DAIKI(Gt)、TJ(Gt)、MAKOTO(Ba)、MAKI(Dr)という現在の編成が揃う。結成当初は「自分たちが聴いていた海外のバンド、その頃でいうとAs I Lay DyingやKillswitch Engageといった“ザ・アメリカ”なバンドに影響を受けて、こういうサウンドを英語詞でやりたい、世界を目指したいと思っていました」(MAKOTO)という。

 彼らが結成された2007年前後を振り返ると、THE MAD CAPSULE MARKETSが活動休止を発表した2006年にCrystal Lakeが1stアルバム『Dimension』を発表し、Pay money To my Painがシングル『Drop of INK』でメジャーデビュー。また、Crossfaithやcoldrainといった現在の国内ラウドシーンを牽引するバンドたちが結成されたのも2006〜7年頃と、HNIB誕生とも重なる。欧米の新世代メタル/ラウドバンドたちの飛躍を目の当たりにした日本のキッズたちが、自らもバンドを結成して「自分たちなりのラウドなサウンド」を表現しようと動き出した……そういった意味も2006〜7年という時期は、日本のメタル/ラウドシーンにとって大きな節目だったのかもしれない。

 そんなHNIBにとって最初の転機は、2008年に日本で開催された『Taste Of Chaos 2008 in Japan』への出演だった。欧米で人気の移動型ラウドミュージックの祭典に参加したことでHNIBを取り巻く状況はどんどん好転していき、2010年には待望の初アルバム『DECADENCE』をリリース。当時は複雑かつプログレッシブな曲展開が印象的なメタルコア/デスコアサウンドが特徴で、これがインターネットを通じて国内外で話題になり始める。その結果、彼らは海外バンドの来日公演でサポートアクトを務めることが増え、初の東南アジアツアーも実現。当時を振り返り、MAKOTOは「まだ1stアルバムの『DECADENCE』しか出してないのに、現地にはHNIBの曲を知っている人もいて。ある意味、いい時代にバンドを始められたなと思いました」と語っている。

 2013年3月には初のEP『THE BEAST EP』を発表。どこか凶暴さを醸し出すIKEPYの風貌が印象的なアートワーク同様、重戦車のようにヘヴィなメタルコアサウンドは当時のシーンに大きなインパクトを与えた。実は筆者がHNIBに本格的にハマったのもこのEPがきっかけ。同じように、そのビジュアルやサウンドから強烈な一発をもらったリスナーは少なくなかったはずだ。

 HNIBはその後も2ndアルバム『HER NAME IN BLOOD』(2014年4月発売)を発表し、国内外で精力的な活動を続ける。同作ではこれまで以上にメロディアスさ、エモーショナルさが増した結果、さらなるファン層拡大につながる。そして2015年9月、EP『BEAST MODE』でワーナーミュージックジャパンからメジャーデビュー。インディーズ時代の代表曲の再録を含むEP『Evolution From Apes』(2016年4月発売)を経て、2016年9月には3rdフルアルバム『BAKEMONO』を発表した。

 “ビーストモード”に突入した彼らは“類人猿からの進化”を経て“バケモノ”へと到達した……そんなストーリーすら感じさせるメジャーデビュー後のHNIBだが、2017年にメンバーチェンジを経て現編成に。EP『FROM THE ASHES』(2017年5月)を挟んで、2018年4月に現時点での最新オリジナルアルバムとなる『POWER』をリリースしている。同作については発売時のインタビューを読んでいただけばわかるように、初期のような複雑な展開が減退し、“よりストレートでパワフル、それでいてキャッチー”という新境地に到達している。結成から約10年を経て、HNIBというバンドが到達したひとつの極みという意味では、同作の内容は非常に興味深いものがあり、これが以降のシーンにどのような影響を与えるのかとリリース時は非常にワクワクしたものである。

 そんなひとつの到達点にたどり着いた彼らが、このタイミングにキャリアを総括するベストアルバムを発表するというのは十分に納得いくことだろう。と同時に、彼らの知名度は限定されたシーンの中でこそ広まっているものの、もっと大きな意味での“ロック”シーンではまだまだと言える。そういった意味でも、バンドの入門編として最適な1枚を用意するという意思も見え隠れする。

      

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