ハルカトミユキ、ベストアルバムに刻んだ成長と変わらぬ軸「強くなった2人の姿を見せていきたい」

ハルカトミユキ、ベスト盤インタビュー

“普通であることを肯定する”、ハルカトミユキの軸

 さて、もう一度ベストアルバムの話に戻ろう。Disc 2の1曲目には、本作のために書き下ろされた唯一の新曲「二十歳の僕らは澄みきっていた」が収録されている。近年はソングライティングの分業化が進んでいたが、この曲のクレジットを見ると、デビュー当時に多かった「作曲:ハルカトミユキ」という記載に。しかし、ハルカがシンガーソングライター的に書いた曲に、ミユキがシンセを加えていた初期の作曲とは違い、ここには新たな可能性の萌芽が生まれている。

「この曲は2人が別々に作っていた曲を合体させたんです。ミユキが作っていたポップ寄りの曲に対して、私は表題にはならないであろう変な曲を作ってたんですけど、ミユキの曲のサビを私の曲のサビに変えたら不思議なハマり方をして、面白い曲になったんですよね。分業もいいんですけど、理想としては2人で作るのがいいと思うんです。これまでは『曲と歌詞』という形で補い合ってたけど、曲自体を補い合えたらもっと強いから、新しいことができそうな予感が感じられる曲になりました」(ハルカ)

「昔はわかりやすく変なことをやろうとしてるのが私で、『クールに見えて、中身は変』っていうのがハルカだったけど、今は逆になってきてるんですよね。この曲ができたときもそう思って、私はもともとポップな曲の方が書きやすいし、本来の形はこっちなんじゃないかって思ったりもしました」(ミユキ)

 2人がこれまでに共有してきた固有名詞を並べ、〈他愛なく君と話した 悪口だけが希望だったよ〉〈寝っころがって夢をなぞった 怒りと若さのやり場を探して〉と歌うこの曲は、ハルカトミユキの結成当初、20歳の頃を振り返るような曲である。そして特に重要なのが、〈それでもいいよ、と許されたくて 正気のままで愛されたくて〉という最後のラインだ。

「『17才』があってこその今回のベストだから、そこから進んだ20歳の気持ちを書きたいと思いつつ、でもそれを今のこととして歌いたかったんです。それこそ、ちょうど『Vanilla』を書いたのが20歳くらいなので、あの“狂えなさ”を改めて言葉にしたらどうなるのかなって考えながら、この曲を書きました。『17才』で私たちのことを知ってくれた人に対して、どんな風にアイデンティティを示そうかと思ったときに、オープンではいたいけど、ちゃんと本質をわかってほしくて、こういう曲になったんです」(ハルカ)

 「どんなに寂しくても、狂ってしまえない」と強く訴えた「Vanilla」に対し、「正気のままで、愛してほしい」と素直に綴った「二十歳の僕らは澄みきっていた」。普通であることを、そのままの自分であることを肯定することが、今も昔も変わることのないハルカトミユキの軸であると、この2曲は確かに証明している。仄かな希望も消えない悲しみも連れて、でも昔よりも遥かに自然体で、今の2人はそれを表現できるようになった。

 大学時代から数えればすでに10年以上の付き合いとなる2人だが、今年初めて2人きりで旅行をして、ロンドンに一週間滞在したという。ハルカとミユキがそれぞれ自分自身を肯定した先で、今度はバンドでもシンガーソングライターでもない、“2人”であることを受け入れ、見つめ直すことにより、視界の先が今また開けつつある。

「最初はずっと2人だったから、もともとバンドに憧れがあって、実際バンドのライブは楽しかったし、いろんなことができて、自由度も上がったんですよね。でも、去年2人で『解体新章』のツアーを回ったときに、改めて2人でできることをいろいろ試したら、むしろこっちの方が自由度が高いんじゃないかと思ったりして。なので、今は2人だけのライブをもっとやりたいんですよね」(ミユキ)

「私もどこかしらバンドに対して劣等感があったというか、『2人でやるしかない』とか『できればバンドのときを見てほしい』と思うこともあったんですけど、今はそういう気持ちがなくなってきていて。もともと2人だったわけだし、そこから一周回って、この2人でできることが絶対増えてるはずだから、そこを突き詰めたい。このベストで再デビューして、ここから先は強くなった2人の姿を見せていきたいと思っています」(ハルカ)

(取材・文=金子厚武/写真=中村ナリコ)

■リリース情報
AL『BEST 2012-2019』
5月29日(水)発売
全曲試聴はこちら
<収録曲>
Disc-1: Honesty
1 17才
2  世界
3  光れ
4  どうせ価値無き命なら (新録)
5  ヨーグルト・ホリック
6  シアノタイプ
7  春の雨
8   Vanilla
9   夜明けの月
10   ドライアイス
11   肯定する
12   宝物
13   感情七号線
14   種を蒔く人
15   手紙
16   LIFE 2 (新録)

Disc-2: Madness
1   二十歳の僕らは澄みきっていた (新録)
2   ニュートンの林檎
3   振り出しに戻る
4   Hate you
5   インスタントラブ
6   マネキン
7   その日が来たら
8   Pain
9   奇跡を祈ることはもうしない
10   絶望ごっこ
11   わらべうた
12   バッドエンドの続きを
13   DRAG & HUG
14   近眼のゾンビ
15   青い夜更け
16   終わりの始まり

Disc-3: Early Years
*初回限定盤のみ *現在入手困難な超初期音源「DEMO」シリーズを完全網羅
1   夏のうた
2   僕達は(from 1st DEMO)
3   アパート
4   空
5   水槽
6   僕達は(from 2nd DEMO)
7   マゼンタ
8   MONDAY
9   POOL
10   385

■ツアー情報
『ハルカトミユキ BAND TOUR 2019』
2019年6月7日(金)大阪・梅田shangri-La
open 18:30 / start 19:00
info:清水音泉 06-6357-3666

2019年6月8日(土)愛知・名古屋APOLLO BASE
open 17:00 / start 17:30
info:サンデーフォークプロモーション(名古屋) 052-320-9100

2019年6月15日(土)東京・渋谷CLUB QUATTRO
open 16:15 / start 17:00
info:DISK GARAGE 050-5533-0888 

チケット代 4,500円(ドリンク代別)  発売中

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