ミニマムジーク「地を這うようにバンドをやっていきたい」 新作『六季』で見出した“等身大”の中にある可能性

上越発の3ピースバンド・ミニマムジークから6曲入りのミニアルバム『六季』が届いた。エモやオルタナのエッセンスを昇華したサウンド面のスケールは大きく広がりつつ、季節や生活を独自の目線から切り取った歌詞には山之内ケリー(Vo/Gt)の感性が色濃く滲み出ており、充実の1枚に仕上がっている。昨年の1stフルアルバム『標本』とそれに伴う長い全国ツアーを経て、バンドとしての地力が磨かれたタイミングでリリースされる『六季』はどのようにでき上がったのか。“難航”したといいつつも、“有意義だった”という制作について、山之内、鍋島ヤヒロ(Ba/Cho)、オオサキケント(Dr/Cho)に話を聞いた。(編集部)
「ライブ1本の重要性が何倍にも跳ね上がった」
――素敵なミニアルバムができましたね。個人的には「millennium babies」や「See you wonderland」が特に好きでした。オルタナ感があって、滋味深くて最高。
山之内ケリー(以下、山之内):嬉しいです。こういうオルタナ系でパワーのある曲って、今の自分たちの一番の課題というか。そんな簡単には作れる曲じゃないからこそ、完成した時はめちゃくちゃ嬉しかったんですよ。「こういう曲もできるようになったんだ」って。
――全体的に、フレーズがシンプルになりましたよね。
鍋島ヤヒロ(以下、鍋島):そうですね。最近聴いている音楽の影響もあって、シンプルなものに対して「カッコいい」と思うことが増えてきたなと実感していて。なので、全曲シンプルなフレーズ作りを心掛けましたね。
――ギターとベースはリフレインも多いけど、聴いていて全く退屈ではない。それはドラムの疾走感によるところが大きくて。
山之内:単調に進んでいく曲が多いからこそ、ドラムで展開を見せるようにお願いしました。
オオサキケント(以下、オオサキ):AメロとBメロの境目とか、移り変わりの部分はかなり意識しましたね。「こうするとグラデーションを作れるな」とか「こういうフレーズを入れると、パッと変わった印象になるな」とか。ドラムは、曲の空気感や雰囲気の大部分を担う楽器なんだと改めて実感しました。

――昨年4月にリリースした1stフルアルバム『標本』は、様々な曲調にトライした作品でしたが、その後23公演のツアーを回って鍛えられた側面もあったのかなと。振り返っていかがでしたか?
山之内:僕はライブと制作を同時にできないタイプで。ツアーを回っていた去年の5~8月は次の制作のことを考えるよりも、とにかくライブに注力していました。「どうやったら作った曲たちをよりよく演奏できるだろう?」ということだけを考えてましたね。
鍋島:今まではバラードとかカッコいい系の曲が多かったので、ポップな曲をライブでやる時に、3人の雰囲気とか自分の見せ方にちょっと苦戦して。
山之内:特にツアーの前半はそうでした。曲に食らいつくのに必死で、笑う余裕もない感じ(笑)。
オオサキ:ツアーが進むにつれて、ちゃんと身になっている感覚を持てました。フルアルバムを作ったことで曲数が増えて、前よりも表現の手段が増えたのはよかったですね。
山之内:あと、これはツアーが終わってから気づいたことなんですけど……「いいアルバムができた」という自信もあったし、ツアーをしっかり回った自負もあったから、その2つがバンドを次の場所に連れて行ってくれるだろうと思っていたんですよ。だけどツアーが終わって、決まっていたスケジュールをいざ走りきった時に、「あっ、まだまだ自発的に必死に動かなきゃいけないんだな」と気がついて。

――バンドは確かに成長しているけど、だからといって世界が大きく変わるわけではないと。
山之内:そうですね。ツアーが終わって、自分たちの中にはまだまだ余熱があるけど、それって僕らの中だけかもしれないな、みたいな。「フルアルバムをリリースしてよかった」と一番思えたのは、そのことに気づけた時だったかもしれない。年末くらいに3人で腹を割って喋ったんですよ。これからバンドをどう動かしていこうかって。
――どういう話をしたんですか?
山之内:「余裕なんてまだまだ持てない」「もっともっとやらなきゃだね」って。「やっぱりバンドに飛び級なんてないんだな」と痛感したというか。何かが自分たちを未来へ連れて行ってくれると思いながら、その“何か”をただ待っているのは無責任だし、「もっと地に足をつけて、むしろ地を這うようにバンドをやっていきたい」という意思確認をしました。その話し合い以降、ライブ1本の重要性が僕らの中で何倍にも跳ね上がって。1本のライブで最低1人はミニマムジークを好きになってくれる人を増やす。ここ2~3カ月くらいはずっとそういう意識でライブをやってます。
“何もない”ところから試行錯誤した制作
――ツアーが終わってから、すぐ制作モードに切り替わりましたか?
山之内:そうですね。『標本』のレコーディングが終わった時にどんなことを考えていたか、というところまで自分の感覚を一気に戻して、また曲を書き始めたという感じです。『標本』を作り終えた時点で、やりたいことがまだまだ余っていたので、一旦それをさらおうかなという気持ちで作り始めました。例えば「millennium babies」は、「SEE THE LIGHT」(『標本』収録曲)のような、ミニマムジークのギラギラした一面をもっと見せたいなと思って作った曲で。ポップチューンをまだまだ作りたいなという気持ちから「春の幻影」が生まれました。そんな感じで、『標本』の延長線上で作りたい曲がもうひとつ、もうふたつとあったので、それを形にしてみたという感じです。結果的にコンセプトのあるアルバムになったのは、「春の幻影」「millennium babies」「泣きぼくろ」を最初に録った時に「この3曲って春、夏、冬だな」と気がついたからで。

――四季じゃなくて『六季』なのは?
山之内:単純に6曲録れたからですね。レコーディング期間は決まっているから、やっぱりできるだけ多く録りたいなと思って。7曲録れていたら『七季』だったし、8曲録れていたら『八季』だったかもしれない(笑)。
――前作は1年以上かけての制作でしたが、今作は短い期間での制作だったんですね。
山之内:かなりスピード感のある作り方をしました。いつもだったらかけているであろうブレーキを全部取っ払って、右脳頼りで作ったというか。メンバーにデモを投げるタイミングも早かったです。
――ということは、いつもよりラフなデモ?
山之内:もう何もないというか(笑)。ワンコーラスだけ渡して、「じゃあどうする?」みたいな。
――2人からすると「“どうする?”って言われても……」という感じでは?(笑)
山之内:本当ですよね(笑)。だからめっちゃ難航しました。

――作曲を3人でしているようなものですからね。
山之内:いつもだったら僕が作っている段階である程度取捨選択するんですけど、今回は3人でスタジオに入って、思いついたことを全パターン試すしかなかったので。そうすると「こうしたい」「ああしたい」って意見がどんどん出てくるし、3人で割れるし(笑)。僕がホワイトボードにいろいろ書いて、「この構成のよさは」って2人を説得するみたいなこともありました。それでも2人が折れないんですよ(笑)。
オオサキ:(笑)。今思い返したら、けっこうエグい制作でしたね。「millennium babies」も「できた!」と思ったら、もう一回崩すことになったし。
山之内:「春の幻影」はマジで録る直前まで決まっていなくて。朝スタジオに入って、大揉めして、レコーディングスタジオに向かう、みたいな。しかも、行きの車の中でもまだ揉めてました(笑)。結局「春の幻影」は2パターン録ったもんね?
鍋島:そうそう。
オオサキ:「融解」もレコーディング直前まで揉めてたし、今みたいなエピソードがそれぞれの曲にあります(笑)。
――意見が衝突しがちだったというか、3人ともこだわりが強いんでしょうか。
山之内:そこはまあ、僕が2人の意見を求めているからというか。僕は自分の書いた曲を客観視できないし、曲作りにはいろいろな道があって、何を選んでも正解だからこそ、2人の意見も聞きたくて。最終的に自分の意見を通すこともありますけど、一旦2人の話を聞いてみる、という時間を大事にしてるんですよね。
鍋島:ケリーが「2人は大人だな」みたいなことをよく言ってたんですよ。
山之内:僕はけっこうガキなんですよ(笑)。いいメロディができたら「何回も繰り返しちゃえ!」と思うし、「もっと高いキーに行ったらきっと楽しいから、転調しちゃえ!」みたいなことを考えがち。でも2人が「いやいや、そんなにやりすぎなくてもすでに満足だよ」と言ってくれる。曲に品を持たせてくれるんですよね。「春の幻影」がコンパクトな構成になったのは、2人の意見が大きくて。最初はもうちょっと長い曲だったんですけど、2人の言う通り、コンパクトにしてみたら僕も「こっちの方がいいな」と思えた。そんな経緯がありました。





















