シンガーソングライター大原ゆい子、アニメ作品に寄り添った変幻自在な楽曲制作力
NHK Eテレで放送中のアニメ『はなかっぱ』の新オープニングテーマとして話題を集めている「えがおのまほう」を歌う、シンガーソングライターの大原ゆい子。昨年は軽快なアコースティックサウンドによる「言わないけどね。」やロック調の「ハイステッパー」を発表。そして最新曲「えがおのまほう」では、誰もが口ずさみやすいキッズソングで、新たな表情を見せている。楽曲ごとにアニメ作品に寄り添う振り幅の広さや懐の深さは、どこからきているのか?
多彩な楽器経験が生む様々なサウンド
大原ゆい子は、高校時代から作詞作曲を始め、2012年からライブハウスに出演するなど、シンガーソングライターとして活動を開始した。『ミスiD』などアイドルものも含め、様々なオーディションを受けた中で、映画『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』主題歌のオーディションで合格を勝ち取り、主題歌「Magic Parade」で2015年にメジャーデビュー。これを機に数多くのアニメでテーマソングを歌うようになり、アニソンシンガーソングライターとして活動している。
フェイバリットアーティストとして、スピッツ、松任谷由実、平川地一丁目、YUIなどの名前を挙げ、ちょっと胸が切なくなるギターソングが好みだという大原(参照:アニソン界のシンガーソングライター大原ゆい子が語る、異色の経歴と“作品に寄り添う音楽”の作り方)。実際に大原と言えば、ギターを奏でながら歌うイメージがあり、例えばアニメ『からかい上手の高木さん』のオープニングテーマ「言わないけどね。」では、普段からMorrisのTF-801を愛用する、彼女らしさ溢れるアコースティックサウンドを聴かせた。一方、TVアニメ『はねバド!』のエンディングテーマ「ハイステッパー」では、MVではギブソンのエレキギター=レスポールをかき鳴らしながら歌い、濃い目のメイクのロッカースタイルでクールな格好良さを披露。YUIが好きと言うのもうなずける。また、TVアニメ『宝石の国』のエンディングテーマ「煌めく浜辺」は、鈴木慶一の作詞・作曲・編曲ではあったものの、ギターではなくエレクトリックなサウンドをメインにした神秘的なサウンドが印象的だった。
大原はギターだけでなく、幼少期よりエレクトーンやバイオリンなども習っていたとそうで、それが楽曲ごとの多彩な音楽的アプローチを可能にしているとも言える。実際の楽曲アレンジの作業は、吉田穣、manzoなどのアレンジャーに依頼するものの、自身の中にあるイメージを伝えながらリファレンス楽曲をいくつも提示して編曲をお願いするそうだ。TVアニメ『はなかっぱ』のオープニングテーマとして話題の「えがおのまほう」は、スウィングジャズをベースにした編曲が新鮮だ。シャッフルの跳ねたビートからは、子どもがピョンピョン跳び回る様子が目に浮かび、トランペットやギターのソロも高揚感たっぷりだ。〈ラランララン〉〈ルルンルルン〉という繰り返しの歌詞とメロディは、子どもでも口ずさみやすいのが特徴。実際、コーラスには子どもたちが参加していて、実にぎやかだ。『はなかっぱ』は、大原自身も子どもの頃から慣れ親しんだ作品とのことで、アニメを見る子どもに対する想いが、各所から感じて取れる。