Lizzoはなぜ万人に支持される存在へ? “ボディポジティブ”の決定的アイコンになった背景に迫る

 リゾの話に戻ろう。プラスサイズのダンサーを引き連れ、常に明るく楽しげなステージを見せる彼女。しかしその内側に宿るのは、「自己愛」を持つことの難しさを乗り越え、その意識を社会にも育もうとする覚悟だろう。彼女は単にポジティブさを振りまいているだけではない。常にどうすれば自分を愛することができるかを自分自身に問いただしているのだ。「セルフ・ケアについての議論をさらに進めることこそが自分の役目」(参照)と語っていることからもそれがわかるだろう。実際、自身も鏡の前で「これが自分だ」と鼓舞しているそうで(参照)、そうした赤裸々な告白もまた、彼女が支持を集める理由の1つだと言える。

 赤裸々といえば、『Cuz I Love You』のリリックもそうだ。リード曲「Juice」では、それこそ鏡を見てそこに写る自分を公表することを歌っている。一方で、自らの孤独を投影した「Soulmate」、また本人曰く、最後には傷ついてボロボロになるような、自分の恋愛感情の移り変わりをなぞったという「Heaven Help Me」などもアルバムに一緒に収められるなど、身体のみならず自分の内面をもリスナーにさらけ出している。弱さとそれに打ち克つ強さを兼ね備えたリゾにならば、自分がどんな体型であれ、誰しもが共感を寄せることができるはず。その意味で彼女は、ボディポジティブムーブメントが待ち望んでいた“真打”たるアイコンなのだ。

 一般的には、「自己評価は、それを他者にあずければあずけるほど、低く不安定なものになりやすい」とされている(参照)。にもかかわらず、リゾはなぜこんなにも自分自身を受け手にあずけることができるのだろう? 前出のレディ・ガガの『Body Revolution 2013』ではファンからこんなコメントが投稿されたというーー「いつも私たちを信じて、パーソナルな生活や苦悩を共有してくれてありがとう」(参照)。SNS上でQ&Aタイムを設けたりと、ファンとのコミュニケーションを大切にしているリゾもまた、受け手である私たちを信頼することで、自分に誇りを持つことができているのかもしれない。そして私たちもまた、そんな彼女の存在に勇気づけれらている。確かに、リゾの音楽やメッセージは誇りとパワーに満ちている。けれどその誇りは、彼女ひとりから発せられているものではない。彼女を肯定する私たちもその一部なのだ。だからこそ私たちは、この“ボディポジティブアイコン”を愛さずにはいられないのだ。

■井草七海
東京都出身、ライター。 2016年頃から音楽関連のコラムやディスクレビューの執筆を始 め、現在は音楽メディア『TURN』にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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