新人SSW 川口レイジから感じるポップミュージックの変動 歌声の魅力活かすコラボレーションの妙
とはいえ、アメリカのメインストリームに適応したサウンド、というだけではキャッチーさに欠けるという向きもあるだろう。川口はInstagramでカバーを多数投稿しているが、そこで披露される歌声は「R.O.C.K.M.E.」で聴くことができるややハイトーンの歯切れ良いボーカルというよりも、声色やピッチにボーイッシュな感触を残しながら歌い上げるもので、オリジナル曲とはまた異なる一面を見せている。サウンドのみならず、1月に公開された「R.O.C.K.M.E. ft. Marty James」(David Aubé Remix)のMVでは、BTS (防弾少年団)のMVのコレオグラフィーなども手がける注目株、ノルウェーのダンスクルー・Quick Styleをトータルディレクションとして起用し、パフォーマンスのうえでもダンスミュージックの文脈を意識した展開を続ける川口。いつかその歌声を活かした楽曲にも期待したいところだ。
近年、ロックバンドやシンガーソングライターに対して自作自演を重視する日本国内の風潮に対して、コライティングやコラボレーションの魅力や重要性に光が当たる機会が増えてきている。川口レイジのような未だ無名の新人がリリースするにあたってコライティングというワードが取りざたされるということ自体、アメリカを中心にグローバルに広がるポップミュージックの変動が日本にも影響を与え始めている徴候のように思う。しかし、こうした動向を単に「本場」たるアメリカに追従するものとしてではなく、新たな才能のプレゼンテーションとして最大限に活かすものとして捉えなおすことは重要だろう。盤石なクオリティの楽曲と魅力的な歌唱で、世界へ、日本へどこまで挑めるか。彼が今後どのように足場を固めていくか、期待しつつ見守っていきたい。
■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」
■リリース情報
川口レイジ「R.O.C.K.M.E. ft. Marty James」(starRo Remix)
配信中
CD jacket photo & design:ayane motomitsu
■関連リンク
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