欅坂46には“主人公 平手友梨奈”のほかにもう一つのドラマがあるーー長濱ねるの卒業がもたらす変化

 長濱が、ブログで卒業を発表したのは、3月7日。前日の3月5日と6日には、『日向坂46 デビューカウントダウンライブ!!』が行われていた。けやき坂46(以下、ひらがなけやき)のラストライブを見届けてから、翌日に卒業を発表したのは、実に彼女らしい気遣いであり、感慨深いものがある。日向坂は、創始者と言える長濱が、欅坂の専任というひらがなけやきからの卒業があったことで、より団結力が増し、メンバー全員が主人公となって、今の地位を勝ち取ってきた。すべては長濱が残したひらがなけやきの存在を大きくするため。そして結果的に、日向坂として単独デビューすることになり、ひらがなけやきは消滅する。この出来事は、長濱の退路を断つことにも繋がり、卒業を決心させた一つの要因だったのかもしれない。

 一期生だけでグループが4年近く続くと、変わらないことの重要性も感じるし、「黒い羊」を見る限り、欅坂自体がもう変化は求めていないのかもしれない。とは言え、このタイミングで、長濱がMCを務めるラジオ『欅坂46 こちら有楽町星空放送局』(ニッポン放送)の放送時間変更に伴う拡大が決定するなど、彼女らを取り巻く状況は確実に変化している。あわせて、長濱から外交的なポジションを引き継ぐかのように、ソロでも頑張ろうとしているメンバーが着実に増えてきている印象だ。

 そこでグループの新たな可能性として重要なってくるのが二期生の存在である。3月11日には、ラジオ『ゆうがたパラダイス』(NHK-FM)に、初めて欅坂の二期生から松田里奈と森田ひかるが出演。初登場とは思えないほど、トークスキルなどで即戦力ぶりを発揮し、グループの新たな光が見えたような放送となった。お見立て会でも感じたが、日向坂のように明るく、二期生だけで一つのグループが成立しそうなメンバーが揃っているように思う。そんな二期生の各インタビューを見ていると、今の欅坂が好きで加入してきたことがよくわかる。井上梨名は「何よりも、自分たちが入ることによって欅坂46の素晴らしいグループを壊すことだけはしたくないなって感じています」と語り、武元唯衣もまた「私たちが入ることで、ファンの方が欅坂46に違和感を抱いてしまうんじゃないかっていうことが一番怖かったです」(引用:欅坂46、新メンバー2期生の葛藤とプレッシャー 「『Mステ』出演で嬉しさよりもしんどさ」/ORICON NEWS)とコメント。彼女たちの中には、欅坂の世界観を壊さないようにという考えが一番にある。だが、彼女たちの本来の役目は欅坂に新しい風を吹かすことだと思うので、外への発信力を期待しつつ、一期生と融合した時にどんな化学反応を起こすのか楽しみだ。

 長濱は、欅坂の活動は夏までと発表しているが、武道館のライブには出るのか、今年も『欅共和国』は開催されるのか、まだ不明である。日向坂のように、長濱がいなくなる危機感から、一期生と二期生が一丸となって向上していくことを願うばかりだ。そういう天性の役割が長濱にはあるのかもしれない(そう言えば、日本テレビ系ドラマ『残酷な観客たち』は長濱がクラスを創造していくループのような最後だった)。残りわずかな欅坂としての長濱の今を心に刻みながら楽しみたい。

(文=本 手)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる