金子厚武の「アーティストの可能性を広げるサポートミュージシャン」

えつこ&ささみおが語る、サポートコーラスへの思い「川谷絵音くんの現場が今の私を作ってくれた」

 indigo la End(以下、インディゴ)やゲスの極み乙女。(以下、ゲス乙女)にコーラスやキーボードとして参加し、現在ではレコーディングにもライブにも欠かすことのできないサポートメンバーとなっているえつことささみお。えつこはkatyusha名義でのソロ活動に加え、DADARAYのメンバーとしても活動、ささみおはインストバンドのゲストボーカルを務めるなど、それぞれ活躍の幅を広げている。サポートという立場で、インディゴとゲス乙女の両方に関わっているからこそ見える、二つのバンドの違いや、コーラスに対するこだわりなど、貴重な話を聞くことができた。(金子厚武)

「自分も楽器のひとつであろうと思って歌ってます」

ーーまずは二人がインディゴやゲス乙女のサポートを務めるようになった経緯から話してもらえますか?

ささみお:そもそも私は大学のサークルで川谷(絵音)さんと(休日)課長の後輩だったんです。で、まだスタジオで自分たちで録音をしているようなときに、「コーラスをしてくれ」って言われて、やらせてもらったのが最初でした。ただ、その頃はまだライブには参加してなくて、私は普通に就職して、逆にインディゴやゲス乙女はどんどん有名になっていって、私からすると手の届かないところに行ってしまった感じで。

ーーでも、その後に誘いがあった?

ささみお:就職して2年目くらいのときに、私が大学時代の先輩と組んだバンドのライブを、川谷さんが見に来てくれて、「あとで連絡します」って言うから、またレコーディングかなって思ったら、今度はライブで。最初は週末だけ参加してたんですけど、だんだん「ここも、ここも」ってなって、有給を使ったりするようになり、「猟奇的なキスを私にして」のレコーディングからは、ゲス乙女の方もやり始めて。で、どっちも居つくようになり、最終的に会社を辞めて、今に至るっていう。

ーー会社を辞めたのはどのタイミングだったんですか?

ささみお:2014年の年末にインディゴとゲス乙女で沖縄に行ったんですよね。そのときに、周りから後押ししてもらい、もちろん悩みはしたんですけど、メンバーもスタッフさんも「大丈夫」って言ってくれたので辞める決心をしました。年明けすぐに会社に言って、年度末までは働いたんですけど、辞めたその日にLIQUIDROOMでライブがあり、退社して、そのままライブしました(笑)。

ささみお

ーーえつこさんはどんな経緯だったのでしょうか?

えつこ:もともとはkatyushaでインディゴと対バンしたことがあって、最初はTwitterでお互いフォローし合うだけの薄い繋がりだったんですけど、当時ベースだった課長とは唯一仲良くなって。で、ゲス乙女は各々バンドをやっていて、ちゃんMARIはCrimson、ほな(・いこか)ちゃんはマイクロコズム、みんな下北沢ERA界隈で繋がってたから、それぞれ交流はあったんです。

ーーなるほど。

えつこ:で、2014年の年末にゲス乙女が赤坂BLITZと豊洲PITでライブをしたときに、もともとみおちゃんと私の友人がコーラスをやる予定だったんですけど、その友達が豊洲だけ出れなくなって、私がトラ(エキストラ)で出て、そこでメンバーとひさしぶりに会いました。その帰り際に川谷くんと連絡先を交換して、2カ月後くらいに「インディゴでもやってほしい」って言われて。当時インディゴのコーラスはみおちゃん一人だったから、それも最初はトラだったんですけど、そうやってやってるうちにいつの間にか……取り込まれました(笑)。

ーーそもそも、バンドに女性コーラスを入れるっていう編成自体は、何かモチーフがあったのでしょうか?

ささみお:……聞いたことない(笑)。でも確か、昔Twitterでつぶやいてたんですよね。「女の子でコーラスやってくれる人いないかな?」って。だから、何かしら憧れというか、好きな曲とか、好きなアーティストの影響があったと思うんですけど……。あ、Dirty Projectorsとか好きだよね? ああいうのを求められたときはありました。

えつこ:そうだね。「どういう感じにしてほしい?」って言ったら、「Dirty Projectorsのこういう曲」とか「ちょっと変な感じにしてほしい」とか。あと私が覚えてるのは、ゲス乙女に「ゲストーリー」っていうコーラスを入れまくってる曲があるんですけど、あれは「ABBAみたいにしてほしい」って言ってた(笑)。あの曲はメンバーの声とか全部合わせると20声くらい入ってるんですけど、実際「Dancing Queen」とかを聴いたら、思ったよりコーラス入ってなくて、「これ全然ABBAじゃないじゃん」って(笑)。

ーー実際、コーラスはどんな手順で作っているのでしょうか?

えつこ:川谷くんが「ここをハモッてほしい」っていうのを歌詞の紙に線で引いて、「ここは何声、ここは上ハモ・下ハモ」とかは決まってて、ハモリのパターン自体は私が考えてます。私とみおちゃんの声は全然違うので、みおちゃんが高音域、私は中・低音域みたいな感じで振り分けてますね。

えつこ

ーーサポートをすることの面白味や難しさは、それぞれどのように感じていますか?

ささみお:ゲス乙女に関しては、そもそも女の子が二人いるバンドで、そこにさらに女性コーラスを入れるので、メンバー二人の声とか歌い方とは別なものを出そうっていうのは思ってます。インディゴに関しては……単純に、曲が難しい(笑)。ロングトーンとか、そういうのの比率が多いので、レコーディングで時間をかけ過ぎないように頑張ろうっていうのは毎回思ってますね。ライブでは楽器の一部になるというか、センターに川谷さんがいて、立ち位置的にも川谷さんを囲むようにみんながいるから、自分も楽器のひとつであろうと思って歌ってます。

ーーインディゴの方が難しいんですか?

ささみお:ゲス乙女も難しいんですけど……ゲス乙女の方が飛び道具感があるかも。

えつこ:「某東京」とかね。

ささみお:ゲス乙女が飛び道具なら、インディゴは……イメージ的には、私の中ではストリングスなんですけど。

ーーえつこさんからすると、どっちの方が難しいとかってありますか?

えつこ:もともとのバンドの世界観が違うから、同じようなラインでも、違って聴こえるっていうのはありますよね。インディゴでは私も楽器を弾いちゃってるので、それをやりつつのコーラスって考えると、インディゴの方が難しいかな……。まあ、どっちも難しいけど(笑)。

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