浜崎あゆみの宇多田ヒカルカバーはなぜ“新たな代表作”となった? 『FNS歌謡祭』出演を機に考える

 同期である浜崎と宇多田は、ライバルというよりもむしろ“同志”として互いを意識していた。だからこそ宇多田は初のトリビュートアルバムに浜崎を選んだのだろうし、浜崎は2人が音楽シーンを走り始めた頃にリリースされた「Movin' on without you」を選んだのだろう。また、同曲について浜崎は「私的にヒカルちゃんとのリリースタイミングが近かったり等の理由で当時よく耳にしていた、思い出のある「Movin' on without you」をチョイスさせて頂きました。今でもこの曲を聴くと、あの頃の日々が鮮明に蘇ります」と述べている(参照:浜崎あゆみオフィシャルサイト)。そんなコメントからも、浜崎が宇多田を同志として見ていたことが伺える。

 同曲は、当時活動休止中だった宇多田へのエールも込められているように思う。海外の大物プロデューサーの起用や、彼女らしさと宇多田への敬意を感じさせるアレンジ。一聴すればわかるその熱量からは、音楽シーンを走り続けるという浜崎の意志を感じると同時に、宇多田を鼓舞するようにも響いてくる。

 現在活動を再開し、再び音楽シーンを牽引している宇多田ヒカル。浜崎が披露する「Movin' on without you」のパフォーマンスは、彼女にはどう見えるのだろうか。そんなことを考えると、それだけで胸に迫る思いになる。

(文=北村奈都樹)

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