浜崎あゆみ、デビュー20周年で“マイノリティ”と向き合う存在に LGBTイベント出演から考える

 浜崎あゆみが5月6日、東京・代々木公園の野外ステージで行われた日本最大級のLGBT関連イベント『東京レインボープライド2018』に出演。自身初となるフリーライブで全7曲を歌唱した。

浜崎あゆみ『MADE IN JAPAN』(CD+DVD+スマプラ)

 レインボープライドは、LGBTをはじめとするセクシャルマイノリティへの理解を深めることを目的として、2012年から行われているイベント。7回目の開催を迎えた今年は、週末の2日間でおよそ14万人を動員した。6日には渋谷から代々木公園までを参加者が練り歩くパレードも行われ、こちらにも過去最高の7000人が参加したという。思いを共にする人々が集う場を作るにとどまらず、今年のテーマとして掲げた「LOVE&EQUALITY」をより多くの人たちに訴えかける機会となった。

 さらに、浜崎が同イベントに出演したことにより、翌日の各局ワイドショー・情報番組ではレインボープライドが大々的に取り上げられた。なかには、浜崎の出演シーン以外にも浜崎のコスプレをした参加者にインタビューをしたり、イベント会場の様子が映し出されたりする場面も。浜崎あゆみの今回の出演は、翌日以降も本イベント、ひいてはLGBTへの関心を高めることに一役買ったといえるだろう。

 もちろん、当日の出演が、会場に集まったLGBTコミュニティに大きな勇気や希望を与えたのは言うまでもない。筆者も当日会場に足を運んだのだが、浜崎の出演時間が迫ると、ステージ周辺には歩く隙間のないほどの人々が詰め掛け、盛大な“あゆ”コールが送られていた。20分ほど経過すると、横になった浜崎が2人のダンサーに持ち上げられた状態でステージに登場。「STEP you」「You&Me」「Sparkle」の3曲をメドレーで歌いあげた。最低限のステージセットではあるものの、浜崎の存在感、彼女を取り巻くダンサーたちの華やかさが一日限りのショーのムードを作り上げる。そしてバラード曲「curtain call」「how beautiful you are」を歌って本編を終えると、ヒットナンバー「BLUE BIRD」「Boys&Girls」で大団円を迎えた。ライブを見ていた人の中には、浜崎のファン、LGBTにこれまで興味のなかった人もいたことだろう。しかし、みなで同じ曲で歌い盛り上がった瞬間、間違いなく会場はひとつになっていた。

 途中のMCでは、デビューしたての頃、新宿二丁目の仲間とともに過ごした日々に救われたことなどが赤裸々に語られた。そんな大切な仲間がいるからこそ、浜崎はLGBTへの理解が深い。2012年に発表された浜崎の楽曲で、あらゆるマイノリティへの思いが込められている「how beautiful you are」の披露時には、感極まり言葉を詰まらせ、涙を拭いながら歌う姿も見られた。

浜崎あゆみ / how beautiful you are

 今から1年前、浜崎は自身のInstagramにおいて、今回のライブ中のMCのもとになるようなコメントを掲載している。

 

デビューしたばかりの頃から新宿2丁目が大好きだ。私の青春時代は2丁目で過ごした想い出で埋め尽くされている。狂ったように忙しかったあの頃、仕事が終わってごはんを食べるのも、飲みに行くのも、ボロボロになって泣きに行くのも、嬉しいことがあってお祝いをするのも、いつだって2丁目だった。先日、今年のツアーが無事幕を開けたので少しホッとした私は、昨夜友達がママをやっているお店に遊びに行った。そう、やっぱり2丁目なのだ。相変わらず狭くて古くてタバコ臭くて(ごめんねママ、褒めてるのよこれ笑)壁にはウィットに富んだポスターが並んでいる空間は素の自分に戻れるような、でもおセンチにもなるような空間。 そして今日は長い付き合いになる大事な女性に会って、その人の話を聞いて言葉を失い、昨夜帰宅してから悶々とひとり考えていたとある事が更に自分の中で大きくなった。 それは、日本はどうしてこんなにもマイノリティへの理解がなかなか進まないのだろうという事。例えばLGBTの人達に関するセクシャルマイノリティーしかり、女性が男性社会で権力を持ち発言しようものならマイノリティーオピニオンだ、と。 だったら私はマイノリティーの一部として発信し続けようじゃないの。少数派である事イコール弱者ではないと。多数派イコール強者ではないと。 楽しんだモン勝ちよ!笑って笑っていきましょう!

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 そこに残された「私はマイノリティーの一部として発信し続けようじゃないの。少数派である事イコール弱者ではないと。多数派イコール強者ではないと」という誓いは、今回のイベント出演にもつながっているのだろう。2018年4月8日、浜崎あゆみはデビュー20周年という一つの節目を迎えた。今後は自分の思いを届ける、さらには仲間をはじめ“マイノリティ”として生きる人々のために行動するアーティストとしての一面をより多く目にすることになるかもしれない。

 海外では、マドンナ、カイリー・ミノーグ、シンディ・ローパーといったLGBTコミュニティに多くのファンを持つディーバ以外にも、レディー・ガガやケシャ、ケイティ・ペリー、マイリー・サイラスといったLGBTへの理解が深く、自らさまざまな問題と向き合いながらメッセージを世に放つシンガーが存在している。浜崎あゆみも日本において、一つの前例を作る存在となるか。

(文=久蔵千恵)

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