KANDYTOWN、ズットズレテルズ、あいみょん……メジャー/インディーを自在に生きるRyohuのヒップホップ愛

各シーンで活躍、RyohuのHIPHOP愛

 Ryohuの声は、フロウは、そしてその音楽性は、不思議な魅力を持つ。これまでの数年間、ヒップホップクルーであるKANDYTOWNのメンバーでもありつつ、常に探究心旺盛な音楽遍歴を形に落とし込んできた。その柔軟な音楽センスは、今のシーンにおいては珍しいほどである。

 まず、RyohuはKANDYTOWNとしての活動に先駆けて、今や伝説的な若手ファンクバンドとして語り継がれているズットズレテルズのMCとしても活動していた。ズットズレテルズは、ハマ・オカモトらを中心としたバンドだが、そこには当時、KANDTYTOWNの前進的なラップクルーであるBankrollのメンバーからYUSHI(故・草刈雄士)、そしてRyohuが参加していたのだ。2015年、KANDYTOWNの活動が本格化していき、2016年にはWarner Music Japanから見事メジャーデビューを飾るわけだが、Ryohuはずっと果敢に、クルー内外での音楽活動を続けてきた。Suchmosやペトロールズといったバンドとの共演を経て、SANABAGUN.の高岩遼とともに「ストリート兄弟」というユニットを結成し、ショートフィルムを制作するというチャレンジにも挑む。2016年4月にはバンドサウンドにこだわったEP『All In One EP』を発表し、KANDYTOWNとは異なるサウンドアプローチを昇華して見せた。

 また、ビートメイカー/プロデューサーとしてもその才能の片鱗を見せており、KANDTYTOWN名義の作品はもちろん、IOやDonny Jointといったクルー、メンバーのソロ作品にも積極にビートを提供していった。2018年に入ってからもあっこゴリラ「ゲリラ × 向井太―」のリミックスを担当したり、あいみょん「愛を伝えたいだとか」のリミックスにおいてラップを披露したりと、今をときめくアーティストの作品にRyohuらしいエッセンスを反映させていき、2018年10月に発表された富田ラボの新作『M-P-C "Mentality, Physicality, Computer"』にはインタールードなども含む複数曲にラッパーとして参加した他、今年11月にリリースされたばかりのBase Ball Bearのボーカル&ギターを担当する小出祐介によるプロジェクト、マテリアルクラブのアルバム『マテリアルクラブ』においては、RHYMESTERのMummy-Dとともにライムを繰り出している。確実にストリートのヒップホップフレイバーをまといながら、その「センス」を武器に、メジャー/インディー問わず、実力を兼ね備えた引っ張りだこの人気アーティストとして、その名を刻んできたのだ。

 そんなRyohuが、2017年にリリースしたEP『blur』に続くミックステープ『Ten Twenty』を発表する。限定配信にとどまり、気軽にアクセスできるミックステープという形式には、Ryuhu本人による「手軽に聞いてほしい」との意思が反映されているとのこと。新曲として収録されている「Nothing But A Blur」は冒頭のサックスと鍵盤の音色、そしてフィメールシンガーMALIYAの歌声とのケミストリー具合がまさにRyohuマジックといった趣。これまで限定的に公開されていた「All in One (remix)」は、KANDYTOWNからそれぞれソロ作も好調なIOとKEIJUを招いている。同じく、「Forever (remix)」には同じくMUDが参加しており、自身の過去作に新たにスポットライトを当てている。また、KANDYTOWNのGottzとの「Dowontown Boyz 2.0」はかつてYOUNG JUJU(現在はKEIJU)のソロアルバム『juzzy 92』に提供した楽曲のリメイク版だし、「Ain’t No Holding Back (solo)」は、KANDYTOWN名義でリリースした同名楽曲をソロバージョンとして作り直したもので、こうしたパズルのような作り込み方も、さらに聴く楽しみを増やしてくれる。

 そして今回、Ryohuがテーマとして取り組んだのが、これまであまり積極的ではなかった自身名義の楽曲におけるフィーチャリングだ。上記に挙げたゲストボーカルとクルーのメンツの他にも、「Vibes」にはSIMI LABとしての活動でも知られるOMSBがビートを提供しており(ドラムの鳴り方とベース音が非常に重め!)、本作のフィナーレを飾る「Keep Your Eyes Open」は、田我流らとの楽曲でも知られるビートメイカーのEVISBEATS、そしてMICHEL☆PUNCHによる共作のトラックをフィーチャーしている。そして、『Ten Twenty』のハイライトとも言うべきなのが、THE OTOGIBANASHI’Sのin-dと、Campanellaを招いた「Where the Hood At」だろう。東京生まれのRyohu、湘南エリア出身のin-d、そして名古屋を拠点をするCampanellaらがそれぞれの地元に想いを馳せ疾走感のあるマイクリレーを繰り広げる様子はスリリングであり、彼ら世代の勢いの良さを十分に感じさせる。

 Ryohuらしい遊び心に溢れた今作。これまでに培ってきたいくつものコラボ経験や、彼の根底にあるヒップホップ愛の上に成り立つ快作だ。ちなみに、2018年の一年間は、MIKI、KIKUMARU、Gottzと、KANDYTOWNのメンバーによるソロ作が豊富な一年であった。昨年も、IO、Donny Joint、MUDらのソロアルバムが発表されている。ミックステープのリリースを経たRyohuのソロアルバムもまた、非常に待ち遠しいところである。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
Twitter 
blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演

Ryohu『Ten Twenty』

■リリース情報
『Ten Twenty』
発売:2018年11月30日(金)
Digital Only
<tracklist>
01. Call Your Name ('18)
02. All in One (Remix) [feat. IO & KEIJU] 
03. Ain't No Holding Back (Solo)
04. Forever (Remix) [feat. MUD]
05. Lux (feat. MUD)
06. Nothing But A Blur (feat. MALIYA) 
07. Wash (Put a Melody)
08. Downtown boyz 2.0 [feat. Gottz]
09. Shotgun Shuffle, Pt. 2
10. Song in Blue (Interlude) [feat. AAAMYYY]
11. 8 Money (feat. Kento NAGATSUKA)
12. Blue Rose (Dreams)
13. Kool Breeze 1.5
14. Where the Hood At (feat. in-d & Campanella) 
15. Vibes (prod. by OMSB)
16. Keep Your Eyes Open (prod. by EVISBEATS & MICHEL☆PUNCH)

・配信各社リンク
APPLE
ITUNES
SPOTIFY
AMAZON
LINE
AWA

■リリース情報
『Ten Twenty Tour 2019』
2月1日 (金) 大阪 UMEDA BANANA HALL
Guest: SIRUP
2月3日 (日) 名古屋 CLUB UPSET
Guest: Campanella 
2月9日 (土) 福岡 Voodoo lounge ※オールナイト公演
2月10日 (日) 長崎 BETA
東京公演 Coming Soon

<オフィシャル先着先行受付中>
受付URL  (PC&モバイル)
受付期間 : 11/30(金)12:00~12/7(金)21:00

TenTwenty特設サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる