MONKEY MAJIKならではのライブを包み込むアットホーム感 全国ツアーNHKホール公演

MONKEY MAJIKならではのアットホーム感

「ウマーベラス」で会場をディスコに!

 聴かせどころの1つになったのは、「フタリ」から「夢の世界」「アイシテル」「The Mistakes I’ve Made」と続いたバラードゾーンだ。「フタリ」は、2006年にリリースした3枚目のシングル曲で、多部未華子や貫地谷しほり、池松壮亮などが出演した映画『夜のピクニック』主題歌として当時話題を集めた。「Around The World」のヒットで一躍注目を集めた彼らが、MONKEY MAJIK=英語という印象から、日本語の極上バラードナンバーも歌えるバンドだと世の中に認知させた1曲。やさしい歌声が広がり、観客はゆっくりと体を揺らした。続く「夢の世界」は、2011年の6thアルバム『westview』に収録されたピアノが切ないバラードナンバー。出だしを失敗するアクシデントもあったが、ちょっと咳払いをして、気を取り直して歌い始めると、一気に切なく孤独な情景が浮かび上がった。同曲を収録したアルバム『westview』は、ロンドンでマスタリングが行われ、それ以前にはなかったスケールの大きさが話題になったことが思い出される。ステージには夕日のようなライティングが当てられ、楽曲の世界観が会場いっぱいに広がった。

 2009年のヒット曲「アイシテル」は力強く温かさのあるミディアムなサウンドに乗せて歌われた〈しあわせすぎたの あなた残した記憶全てが〉というフレーズが、胸を締め付けた。そして「The Mistakes I’ve Made」は、孤独感が溢れるナンバー。ニュージーランドでレコーディングされた2016年のアルバム『southview』収録曲で、まるで洋楽のようなスケールの大きなサウンドに、〈涙が枯れるまで〉というフレーズや、教会で鳴っているようなオルガンの音が印象に残る。曇り空が広がる海岸でひとり海風にさらされているような情景が目の前に広がった。

 また、この日初披露の曲でもファンを喜ばせた。「仙台コラボの第2弾です。今回はアノ曲をリメイクしました」と紹介し、MONKEY MAJIK × 稲垣潤一 × GAGLE名義で12月5日に配信リリースする「クリスマスキャロルの頃には -NORTH FLOW-」を披露した。稲垣潤一の原曲「クリスマスキャロルの頃には」は、1992年にリリースされたミリオンヒット曲。クリスマスを彩るJ-POPの名曲のひとつで、「まだ時期的にちょっと早いけど、みなさんメリークリスマス!」と、いち早く披露してくれた。有名なサビメロはそのままに、新たな歌とラップが加わった「クリスマスキャロルの頃には -NORTH FLOW-」は、原曲のメロウさと切なさに新たな味わいが加わり、より今の時代にフィットした「クリスマスキャロルの頃には」になっていたように思う。観客も初めて聴く曲を聴き漏らさないようにと、静かに聴き入っていた。

 MCでは今年を振り返る場面もあった。「いろいろあって、忙しかった。いいアルバム(2018年3月21日発売11thアルバム『enigma』)もできて、夏フェスにも久しぶりに出て楽しかったし、「ウマーベラス」も最高なコラボだった」と、メイナード。最近11キロ痩せたと言うブレイズは、「痩せたのは「ウマーベラス」のおかげかな。衣装が緩くなって、ベースのDICKからベルトを借りました(笑)」と笑いを取る。そんなMCの話題にも登った「ウマーベラス」は、2018年のMONKEY MAJIKを象徴する1曲。同曲は、アンコールの最後に披露された。「次の曲はみなさんのお手伝いが必要です。準備はOK? 練習してきた?」と、メイナード。その声に応えて、ファンキーなサウンドに合わせて一緒に振り付けを踊った観客。会場にはミラーボールが回り、NHKホールは一気に懐かしのディスコ空間へと変身した。食べ物の名前が出てくるところは、〈もんじゃ、柳川、ちゃんこなべ〉と東京名物に置き換えられ、観客は一緒に歌って大興奮。NHKホールが完全一体になって、ウマーベラスダンスを楽しんだ。

 MONKEY MAJIKの音楽は、人の気持ちに寄り添ってくれる。シングル曲を中心にしたこの日のライブは、それが実に顕著だった。悲しいとき、孤独なとき、苦しいとき、うれしいとき、楽しいとき。彼らの楽曲は常に隣にいて、ときにはやさしく手を引いてくれる。東北の震災を自ら経験し、そこで体験したやさしさとぬくもりは、彼らの活動の原動力になった。震災以前にリリースした「アイシテル」や「ただ、ありがとう」などは、今ではその曲の持つ意味や説得力がまるで違う。あれから7年、まだ傷が癒えない人も多い。東北に限らず、さまざまな想いを抱えた人が全国にいる。彼らは今、全国ツアーを通じてより多くの人に寄り添い、手を引き、笑顔を広げてくれている。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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